マンガ、コミックス評

蛭子能収『私は何も考えない』

蛭子能収の『私は何も考えない』(青林堂 1983年発行)を読む。 これは蛭子さんの作品の中でも、エログロ・ナンセンスの傑作ではなかろうか。 とにかく面白い。 蛭子さんが自分で書いている解説文までが、「天然」のユーモアがあって面白い。

漫画「桜の森の満開の下」

「桜の森の満開の下」といえば坂口安吾の小説である。 それを近藤ようこが漫画にした。元は小学館から出版されていたものを、 今月岩波現代文庫から再出版されたのを、新聞広告でみつけたので駅前の ジュンク堂まで行って買ってきた。一緒に「夜長姫と耳男」…

近藤ようこが漱石の「夢十夜」をマンガに

『夢十夜』とは夏目漱石が「こんな夢を見た」という書き出しで、第一夜から第十夜まで 不思議な夢の話しを書いた短編の連作小説である。 それを近藤ようこがマンガにした。 岩波書店、2017年1月19日発行、定価(本体1300円+税) 近藤ようこは『…

谷口ジローさん死去

新聞報道によると、漫画家の谷口ジローさんが2月11日に69歳で亡くなった。 関川夏央、谷口ジローによる『「坊っちゃん」の時代』が1998年の手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞 したときに読んだのが谷口ジロー作品の初体験だった。ついで『父の暦』を…

「この世界の片隅に」

アニメ「この世界の片隅に」をTジョイ大泉で観てきた。 とても上質な作品だった。 原作のマンガにつては書評も書いているが、原作にない画像も多数あった。 アニメ冒頭の広島市街の詳細な絵とか、呉港に入港している軍艦の絵、米軍爆撃機による軍港爆撃図、…

小林よしのりの「”君の名は。”がキネマ旬報圏外の理由」

マンガ家の 小林よしのりさんがブログで表記の記事を書いている。 わくわく亭も賛同する記事なので、ここに一部を紹介する。 ☆ キネマ旬報で1位は『この世界の片隅に』で、2位が『シン・ゴジラ』だという。 『君の名は。』は圏外だったらしい。まさに、やっ…

マンガ『この世界の片隅に』

こうの史代の『この世界の片隅に』はとてもいい作品だった。 この作者の『夕凪の街 桜の国』の書評を書いたのは2009年の9月12日だったから、 あれから7年になる。あのときすでに『この世界…』も出版されていたのだが、いままで 読むことはなかった。…

マンガ月刊誌「IKKI」の休刊

小学館が発行していたマンガ月刊誌「IKKI」が11月号をもって休刊になった。 わくわく亭は「IKKI」の購読者ではないが松本大洋の「SUNNY」を連載していた月刊誌だと いうことは知っていたので、「SUNNY」の今後はどうなるのか気になって…

松本大洋『Sunny』⑤

松本大洋の『Sunny』⑤を買って駅前のコーヒーショップで読んだ。 三重県のある町にある児童養護施設「星の子学園」に暮らす10人あまりの子供たちの 物語。一話ごとに物語の主役が替わりながら、一人一人の境遇が明かされていく。 それぞれ個性的な子…

松本大洋『Sunny』④

松本大洋の『Sunny』第4巻。小学館、定価:本体905円+税 第20話から第24話を収めている。 どれも「家」の子供に戻りたくても戻れない「園」の子供たちが、どうやって心に秘めた 深い悲しみを押し隠しながら、今日を生きていくかを物語る、しず…

『フイチン再見!』

朝日新聞で、村上もとか作『フイチン再見!』の紹介記事を読んだ。 〈伝説の女性マンガ家 波乱に満ちた上田としこの生涯を村上もとかが描く〉 どんなマンガ家だったか知らない。 知らないはずだ。彼女は1917年生まれで、マンガ家デビューしたのが193…

まんが絵本『いきのびる魔法』

美術家の横尾忠則さんが「何度読んでも胸に響く純文学的漫画絵本だ」評していたので、さっそく 書店を2つ回ったが、置かれていなかったので、AMAZON経由で買って読んだ。 西原理恵子さんのまんが絵本『いきのびる魔法』(小学館・1050円)である…

松本大洋『Sunny』

松本大洋の『Sunny』3巻が発売になった。 2011年に『竹光侍』が「手塚治虫文化賞・マンガ大賞」を受賞したとき、 『竹光侍』が松本の代表作になるものと思っていた。 ところが、そうとは言えないようだ。 その後に発表をはじめた『Sunny』は…

ヤマザキマリとは何者なのか

ミヤコさんから借りていたコミック『テルマエ・ロマエ』の1~4巻のうち、1巻を読んでみて、 なんだこれは、という面白さにびっくりさせられた。 古代ローマ時代の浴場設計技師が、作業中に水中で意識不明になるたびに、なぜか現代日本の銭湯や 家庭の湯船…

松本大洋『GOGOモンスター』

尾道大学での講義の準備をはじめないと、と「勉強」は自宅ではできにくいから大泉図書館へ行く。 図書館では新聞や雑誌を読むから、勉強はできなかった。図書館から駅前まで散歩して、古書店に寄ると 松本大洋の『GOGOモンスター』があった。それと、と…

松本大洋『青い春』

いしかわじゅんがマンガ評論『漫画の時間』(晶文社)で取り上げていた松本大洋の作品は 『青い春』だったので、どこかで見つけたなら読んでみたいと思っていた。 幸運にも、大泉学園駅の近くにあるブックオフで見つけたから買ってきた。 同時に安彦良和の『…

谷口ジローの『ふらり。』

新聞に、この「ふらり。」の書評が載っていたのを見て、読みたいと思いながら、 そのうちに忘れていた。 去年12月はじめ、大泉学園のブックオフで見かけて、思い出した。 「ラッキー」と買ったのだが、定価876円が500円だったから、古本としては ラ…

アニメ『時をかける少女』

テレビのWOWOWでアニメの『時をかける少女』を見た。 主人公17歳の女子高生真琴が、いかにも現代の17歳らしいキャラクターに描かれていて、 とてもキュート。千昭が告げる別れの言葉「未来で待っている」は、真琴が成長して 大人になる日のことを暗示し…

松本大洋『竹光侍』

前回(4月10日)の『ピンポン』の記事で、「しかし、最近作の『竹光侍』全8巻には、 その異形のものが全開している。次回、それを紹介する」と予告しておきながら日が過ぎていた。 昨日、新聞の一面は米軍によるビンラディン殺害記事で、ほとんど埋め尽…

松本大洋の『ピンポン』

コミックの単行本としては、小学館から1996~97年に5巻で発売された。 わくわく亭が買ったのは、駅の南口にあるコミックス古書店で、5巻そろいで3000円だった。 発行から14~5年経っている。 いつもの通り、遅れてくる読者なのである。 映画…

西原理恵子『パーマネント野ばら』

いま売れまくっているマンガ家西原理恵子(さいばら・りえこ)さんの 『パーマネント野ばら』は大人の雑誌「新潮45」に04年1月号から06年7月号まで、 途中中断があるが、連載され、06年9月に単行本になった作品である。 『上京ものがたり』が04…

西原理恵子『女の子ものがたり』

西原理恵子(さいばら・りえこ)さんの『上京ものがたり』が手塚治虫文化大賞の短編賞受賞 しているというので書評を書いたのが、2007年6月1日だった。 →http://blogs.yahoo.co.jp/morioka_hisamoto/7912829.html あれから3年半あまりだが、その間の…

吾妻ひでお『夜の帳の中で』

吾妻ひでおの『失踪日記』の書評を書いたのは2007年7月1日の記事だった。 → http://blogs.yahoo.co.jp/morioka_hisamoto/11267086.html 『失踪日記』は2006年度の手塚治虫文化賞マンガ大賞をとった作品だった。 わくわく亭は期待はずれだったとい…

谷口ジロー

関川夏央、谷口ジローによる『「坊っちゃん」の時代』が1998年の手塚治虫文化賞 マンガ大賞を受賞したときに、写真の3巻を買ってきて読んだ。 「坊っちゃん」を執筆していたころの夏目漱石を軸にして、鴎外、啄木、子規、一葉、二葉亭、 秋水など文学者…

映画「キャタピラー」と「芋虫」

ベルリン映画祭で寺島しのぶさんが最優秀女優賞を受賞した。 彼女が主演した若松孝二監督作品「キャタピラー」の演技が認められたものである。 寺島さんは歌舞伎名門の家の生まれで、父親が女形も演じる美男役者の尾上菊五郎さん、 母親は女優の富司純子(東…

「見晴らしガ丘にて」

大泉区立図書館が近いので、頻繁に利用している。 本は読むことにして、借り出さない。借りてくるより、館内で読む方が集中できて 早く、しかも精読できる。自分の本をリュックに入れて持参すると、家ではだらだら 読んでいるのが、図書館ではたちまち1冊読…

わたしの人形は良い人形

潮出版社から「山岸凉子スペシャルセレクション1」として、これが書店に出たので 表紙にひかれて買いました。 「わたしの人形は良い人形」「鬼来迎」「ハーピー」「グール」「白眼子」の5作品 が収録されている。 表題の「人形」はやや平凡で、表紙にだま…

燕京伶人抄

皇(すめらぎ)なつきさんの『燕京伶人抄』を読みました。 2年も前に買ったまま、本棚の隅にあったコミックです。 当時まだ女子高生だったブログの「Charlie」さんが推奨していたので買ったものの、 なんということもなく、そのままになっていました…

丸尾末広『少女椿』と『丸尾地獄』

この2冊をAMAZON経由で買った。 『少女椿』は青林工藝舎の改訂版。新刊で1300円だった。発行は2003年10月初版第一刷。 『丸尾地獄』はネットでさがしたが、もう新刊は入手できないとわかり、中古で買ったのだが、 定価1300円が、中古で…

丸尾末広『芋虫』

丸尾末広という作家の本は『パノラマ島綺譚』を読んだのがはじめです。 「ガロ」系の奇才だという評判は聞いていたものの、手塚治虫文化賞「新生賞」受賞と なるまで読むきっかけがなかったのです。 『パノラマ島綺譚』については6月7日の記事に書きました…