江戸の文人・作者たち

ひっくりかえった恋川春町

太宗寺周辺に中橋稲荷をさがすため新宿二丁目に行ってきた。 地下鉄丸ノ内線の新宿御苑前で下りて、地上へ出たら目の前に太宗寺はあった。 中橋稲荷のことについては、また稿をあらためて書くことにして、 ここでは恋川春町の墓のことを書く。 新宿通りから…

「朝顔」と植木玉厓(うえきぎょくがい)

ブログを忙しく書いていると、小説を書かない。小説を夢中で書いていると、ブログは書かない。 「書く」ことをつかさどっている脳内の細胞分野が同じだろうから、ブログと小説と、どちらかを充分に 書くと、他方はおろそかになるのは当然のことだろう。 去年…

京伝鼻

川上桂司さんの「染絵手ぬぐい2人展]で買ってきた一枚です。 江戸天明4年に山東京伝が主催した「手拭合」(てぬぐいあわせ)に、京伝自らが出品した作品を 川上さんが復活させたものです。 暖簾(のれん)から顔をのぞかせた若旦那は、京伝が書いた黄表紙…

渋江道順って誰だ?

このところ『慊堂日暦』を読んでいるのです。 江戸後期の儒者、松崎慊堂先生の日記です。東洋文庫(平凡社)から6巻として出ているもの。 その第3巻、天保3年3月6日の記事に注目しました。 《晴れて温かい。門人の野本が来て、ともに語る。狩谷棭斎翁は…

鯨と京伝

江戸天明4年に催された「手拭合」の出品作から、「熊野染」です。 黒地に目だけを染め抜いて、鯨の接写をした趣向です。じつに奇抜で、斬新。ポップアートの感覚です。 江戸時代、捕鯨が盛んだった紀州の熊野灘から名前をとって、「熊野染」とよばれている…

頼山陽18歳の旅日記(2)

3月17日、頼山陽たちは、尾道から舟に乗ります。 「千光寺、天寧寺、西国寺などの楼閣が、市の後の山腹に高くそびえているのを見る。 なかでも千光寺がもっとも高い。10丈ばかりの水精石の、六角形をしたものが、塔の上に突っ立っている。 昔、唐人が夜…

頼山陽18歳の旅日記(1)

頼山陽(らいさんよう)は広島藩儒の家に生まれた儒学者であり、漢詩人であり、歴史家であり、思想家でありました。 山陽について書かれた書物は、学術的な研究書、評伝から梶山季之さんのはちゃめちゃな時代小説まで、おびただしい数にのぼります。なかでも…

はじまりは森鴎外

僕の江戸文人好きは森鴎外の歴史小説、なかでも漢文や漢詩がいっぱいで読みづらい史伝ものに分類 される作品からはじまったものです。 「渋江抽斎」「阿部一族」「伊沢蘭軒」などです。 「伊沢蘭軒」などは、部厚い漢和辞典なしでは1ページも読めません。 …