松本大洋『Sunny』

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松本大洋の『Sunny』3巻が発売になった。

2011年に『竹光侍』が「手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞したとき、

竹光侍』が松本の代表作になるものと思っていた。

ところが、そうとは言えないようだ。

その後に発表をはじめた『Sunny』は、どうやらその上をいきそうだからである。

それは、三重県のある町にある児童養護施設「星の子学園」に暮らす10人あまりの子供たちの

物語。一話ごとに物語の主役が変わりながら、一人一人の境遇が明かされていく。

それぞれ個性的な子供たちが、つらさや悲しみを心に秘めながら、施設のちょっとした

出来事になぐさめられて生きていく姿が、まことにリアルに描かれて、深い感動を生み出す。


おや、松本大洋はそんな施設で暮らした経験があるのだろうか。

しらべてみると、作者が10歳の頃に、そんな施設で暮らした経験があることが、連載雑誌の

インタビュー記事の中で語られていた。

その一部を引用する。

話の構想自体は、デビュー時から温めていて。実は、僕も同じような施設にいた経験があって、

そのことをマンガにしてみたいとずっと思っていたんです。

ただ、自分の中で当時の体験との折り合いが付いていなかったというか、大人の立場から見つ

め直すことができなくて、子供の視点のみになってしまいそうで、描けなかった。

―――
 
施設を出て30年ぐらい経つし、もういいだろって感じですかね。あと、いま43歳っていうのも

結構重要で。自分の場合、50歳くらいになってから始めちゃうと、ノスタルジックな話を描い

ちゃう気がして。だから今なら描けるというより、今しか描けないかな、と。

実話は実話なんですけど、これはマンガだから!っていったん突き放してみたんです。

現実に一緒に暮らしていた子たちを、そのまま描いてはいないので、そんなに似ていないですね。

ただ、そうやっていろんな事を思い出していると、自分の子供の頃は喧嘩ぱやくて面倒な子供だった

ので、他の子や大人の人たちに悪かったなあ……と、かなり気まずくなってきてしまいました(笑)。

――

いや、悲劇にはならないと思います。施設で暮らした経験がない人だったらもしかして可哀想に描く

かもしれないけど、子供ってのは意外としたたかにやってるもんですよ。描きたいエピソードはいっ

ぱいあるんですが、でも具体的な方向性は考えていないというのが正直なところです。
 
── 

このままのペースで行くとあっという間にみんな大人になってしまうので、第1話以降はバキッと

時間が止まると思います。僕は季節がめぐる描写がすごく好きなんですが、今回はあまりめぐらせら

れないのが悩みどころです。目指すところは、延々と子供時代を描ける「ちびまる子ちゃん」みたい

な作品かな。


発売中の3巻には、各巻6話が収められており、いま18話まで進んでいる。

わくわく亭の好きな話を選ぶとすると、

第一巻では、第1話「横浜ってどこにあるんやろ?知らんわ、東京の辺ちゃうか」

      第3話「女子てなんですぐ泣くんやろ?おんなの涙は、ほぼ無敵なんや」

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      第4話「大人になったら何になりたい?スパイでレーサーでボクサーのチャンピオンや」

第2巻では、第7話「結婚式はドレス着てチャペルでやりたいねん。チャペルて何?」

      第11話「会いたいのんとおんなじくらい会いたないねん。オレは会いたいっ!」

      第12話「街ってずっと怒っとるみたいや。コラー言うて?」

      11話と12話はつづきになっている。

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第3巻では、第15話「おくさま、お茶の時間ですわよ。およばれしますわでございますわよ。おほほ」

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