西原理恵子『パーマネント野ばら』

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いま売れまくっているマンガ家西原理恵子(さいばら・りえこ)さんの

『パーマネント野ばら』は大人の雑誌「新潮45」に04年1月号から06年7月号まで、

途中中断があるが、連載され、06年9月に単行本になった作品である。

『上京ものがたり』が04年12月に、『女の子ものがたり』が05年5月出版であるから、

ほぼ同時期に描かれて作品ということになり、ものがたりも、自伝的な要素に過激な

フィクションを交えながら、三冊がつながる内容になっている。


ある四国の海沿いの町で育った女の子達が、大人になるまでを描いた『女の子ものがたり』、

その中の主人公が上京してマンガを生活の糧にするまでの成長を描いた『上京ものがたり』

だった。

『パーマネント野ばら』の主人公はマンガ家ではないが、どこか都会で結婚に失敗して、

古里の町でパーマ屋を営む母親のもとに出戻りして来た、子連れの女が主人公である。

彼女の幼なじみの女の子たちもまた、平穏で「普通」のしあわせな人生経験はしていない。

それぞれに「殺したろか」「もう死んだろか」というギリギリの人生を歩んでいる。

そんな町の女達が集まってくる“女の懺悔室”が「パーマネント野ばら」である。

女達の生き甲斐は「恋」なのだが、どこにもロクな男はいない。

そんな男でも、いないよりはマシだと、今日も「恋」に狂うのである。


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主人公には毎日逢っている初老の恋人がいる。

いまは、毎日のあてのない生活の中の、ただひとつの生きるよすがとなっている。


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西原流のドギツイ過激なドタバタが、嵐のように吹き荒れて、そしておちついた

日に、フィリピンパブのママをやっている友達がやってくる。

「なおこ、いてるー?」

「今、デート中」とパーマ屋の母親が返事する。

ママが海岸にやってくると、主人公のなおこは一人でしゃべっている。

「なおこ、デート中?」とママは訊く。

読者はここで、ようやく主人公の恋人は、まぼろしだったと知る。

「みっちゃん、わたし、狂ってる?」

「そんなやったら、この街の女はみんな狂うとろ。デートのさいちゅうに、ごめんな-。

あとで店に寄ってや。おいしい焼酎はいったんや」とママは明るく立ち去る。

まだ、主人公の人生は半分も過ぎてはいない。

彼女はこの田舎町で生きるエネルギーの注入をうけて、

まぼろしではない「恋」をさがしに行くに違いない。


こうして3冊の「女の子のともだちものがたり」はつながってゆくのである。


わくわく亭はこの本を、大泉学園スターバックスで読んでいて、ラストシーンで

涙が出た。リュックに本を入れて、紙カップを捨てようとしたら、店の女の子が

「よろしかったら」とそれを受け取り、代わりに捨ててくれた。

いつものマナーなのだが、一瞬涙を催した後だから、女の子の気遣いがうれしかった。


西原理恵子のマンガは「泣ける本」第一位にランクされるそうだが、わくわく亭までが

やられてしまったのだ。