丸尾末広『芋虫』
丸尾末広という作家の本は『パノラマ島綺譚』を読んだのがはじめです。
「ガロ」系の奇才だという評判は聞いていたものの、手塚治虫文化賞「新生賞」受賞と
なるまで読むきっかけがなかったのです。
『パノラマ島綺譚』については6月7日の記事に書きました。
さて、こんど買ったのは『芋虫』です。
もちろん江戸川乱歩の短編小説「芋虫」をビジュアル化したもの、といわれている。
乱歩作品と丸尾末広の感性は、よほど親和性が強いといえるのかもしれない。
しかし、原作は、こんなに強烈な倒錯的な性描写はなかったはずです。
時代的制約があったとしても。
乱歩の短編はサディスティックな視角から描かれた一種の「怪談」だと読んだ
おぼえがありますが、丸尾作品は、すこし以前ならば猥褻書画として警察に摘発
されたであろうほどの真正ポルノです。
しかもテーマが「芋虫」ときているから、グロテスクが強調される。
ところで、「芋虫」の原型は、丸尾作品には早くから登場していたということを
『丸尾地獄』『少女椿』をつい最近入手して読んでみて知ったことです。
両の手足を失った不具の男が、見せ物小屋の芸人であったり、娘と暮らす父親であったり
しています。ここでは、さらに明確に「グロテスク」を描くのが作者の意図だとわかります。
性愛の極地点としてのグロテスクです。
奇才のコラボとなったマンガ『芋虫』であるといえるのではないでしょうか。