丸谷才一さんの『文学のレッスン』(新潮社)は面白い、文学のお勉強の本です。
儒教と仏教が到来するまえの日本には“色好み”という信仰もしくはモラルがあって、
とまあ、むつかしい話のあとで、
本居宣長が亡くなって、弟子達が集まり、酒を飲みながら、あんな偉大な学者は
もう出ないだろう、と口々に褒め称えていた。
すると、酒をはこぶ本居家の女中の一人が、わぁ~、と泣き出した。
弟子達がわけを問いただした。
女中「そんな偉い先生だとは、わたし知りませんでした。毎晩のようにわたしの部屋に来て
いっしょに寝ようというのを、わたしは邪険に断ってばかりいました」
考えていた、ということ。