鞆の浦景観保存裁判のゆくえ
ここの歴史的な景観保存に関して裁判が行われています。
世界遺産の登録申請までしようという鞆の町であるが、住民からは車を使う現代生活にとって不便な
狭い道路などの改善の要求があることは事実でしょうが、行政側から海岸線に沿って埋め立てと橋の建
設する計画が発表されると、歴史的景観を損なう建設に反対する市民の声が上がって、
裁判となりました。反対派市民訴訟に対する判決が広島地方裁判所から出されて、
この景観保存問題についてNHKの解説委員である毛利和雄さんからメールをもらいました。
(ちなみに毛利さんは尾道の出身です)
NHKの時事公論(10月1日放送)のために書かれた記事です。
その一部を紹介してみます。
鞆の浦は、江戸時代以来栄えた港町で、歴史的な町並みの中を通っている道路が狭いため、 港の一部を埋め立てて橋をかける事業を広島県と福山市が計画しています。 しかし、住民の間で意見が分かれ、計画以来すでに25年以上立っています。 広島県が埋め立て免許の申請に踏み切ることになったため、反対派の住民が、 事業が行われれば世界遺産の可能性がある歴史的な景観が損なわれ観光振興の妨げになるとして 埋め立て免許の差し止めを求めて広島地方裁判所に訴訟を起こしていました。 鞆港には灯台にあたる常夜燈や階段状の雁木など歴史的な港の施設が今でも揃って残っている 日本でも唯一つの港町です。 映画監督の宮崎駿さんがこの町に滞在し、「崖の上のポニョ」の構想を練った町としても 知られています。 ところが埋め立て架橋が完成しますと、ご覧のように瀬戸内海を眺める景観が妨げられる ことになります。
きょうの判決で広島地方裁判所の能勢顕男裁判長は、 「景観は原告に法律で保護されるべき利益がある。 鞆の浦の景観には、文化的、歴史的価値があり、国民の財産ともいうべき公益だ。 しかし、埋め立てが完成した後で復元するのはほとんど不可能だ」と指摘しました。 その上で、「道路整備をはじめ地域整備のやり方について重要な景観を犠牲 にしてするだけの効果があるかどうか、事前の調査が不十分で計画は合理性を欠いており、 免許をおろすことは行政の裁量権を超えている」として、 広島県知事に埋め立て免許の差止めを命じました。(略) 今日の判決は、景観の保護を理由に事前に公共事業の中止を命じた判決としても初めてです。(略) 今回の鞆の浦のように歴史的景観について行政訴訟で認められたことは、 今後の日本の景観保護に大きな影響を与えるものと言えます。
今、日本における公共工事のあり方が問われています。政権交代があり、 ダムや道路など公共工事のあり方が民主党政権のもとで見直しされようとしています。 公共工事につきましては、あまり注目されてきませんでしたが、 国交省自体が「美しい国づくり政策大綱」を6年前(平成15年)に打ち出しています。 その中で公共工事が戦後の復興や、経済成長に大きな役割を果たしたが、 その一方で美しい日本の風土や景観を破壊してきたとの反省を表明し、 今後の公共工事のあり方を見直すべきだとしています。 そのように、公共工事のあり方は景気の浮揚効果だけではなく、 景観や自然保護の観点からも見直すべきだとの考えはすでに打ち出されているのです。 きょうの判決が、そうした考え方を後押ししてもらいたいものです。
のために歴史的景観を犠牲にした最悪の見本として今日残されています。
経済効果という短絡的な目的のために、どれほどの文化的遺産、景観という国民的な財産を
破壊毀損してきたことか。
鞆の景観保護裁判が、たとえ最高裁まで争うことになろうとも、国民の財産は国民の手に
取り戻さなければなりません。