尾道は世界遺産となれるか

イメージ 1


先日7月15日の「尾道サポーターの会」では、毛利和雄さんに会って、

氏の新著『世界遺産地域再生』と、わくわく亭の『サンカンペンの壺』

を交換することができました。

毛利和雄さんはNHKの解説委員をつとめ、

考古学から文化財保護などの分野を担当している。

高松塚古墳は守れるかー保存科学の挑戦』(NHKブックス)

などの著書がある。

今年6月に『世界遺産地域再生』が新泉社から出版になった。



この本を、昨日までの連休に読んでみて、「世界遺産」とは何か、

どこがどんな基準で認定しているのか、石見銀山が登録に成功して、

さいきん平泉の登録が不成功だったのは何故か、

福山の鞆と尾道世界遺産登録をめざしているらしいが、

はたして可能性はあるのか、といったホットな話題が

明解に解説してある本で、勉強できました。



世界遺産条約というものがあり、加盟国から投票で選ばれた

21ヶ国で構成される委員会が世界遺産に登録すべきかどうかを

決定するのだそうだが、候補となる資産を調査、審査して

委員会に勧告する専門家組織があって、

それがイコモス(ICOMOS)という組織。


日本にはすでに13の世界遺産がある。

京都、日光、法隆寺厳島神社琉球王国遺跡、姫路城、白川郷

知床、白神山地、広島平和記念碑、奈良文化財紀伊山地霊場と参詣道、

屋久島、そして石見銀山である。



毛利さんは、石見銀山が初め登録申請しながら、「登録延期」の、

事実上「NO」の判定に失望しながら、追加説明をして、

ついに登録に成功した秘密を分析して、

いかに保存のための市民活動が大切かを説いている。

ただ、そこに史跡や遺跡があるだけでは世界遺産登録は無理で、

その資産がどのように周辺の環境と共生してしてきたかという

イコモスを納得させるだけのストーリーが必要だという。

石見銀山を取り巻く環境についてのダイナミックなストーリーが

イコモスを説得することに成功して、逆転登録となったらしい。

そこに至るまでに、県と町、企業も市民も、町並み保存事業をはじめ、

めんみつな考古学歴史学的な調査、鉱山や遺跡の発掘、

文化財の町民による清掃作業にいたるまでの、

総合的な努力が実ったのだった。

世界遺産登録は、過疎地再生のエンジンとなって、

観光地として国内のみならず海外からも観光客を呼び集める

ことが可能となりつつあるという。




さて、尾道世界遺産登録に成功する可能性はあるのだろうか。

成功のためのカギはなにか。

毛利さんは「中世以来の豪商が築いた寺社がある尾道三山の景観を

一つの核にするとしても、それだけでは世界遺産は難しい。

仏教寺院はすでに法隆寺や古都奈良、古都京都がすでに

世界遺産登録されている。

石見銀山の例で)みてきたようにストーリーが必要だ」という。

それは瀬戸内海の歴史と文化をまきこんだような、

イコモスを納得させられるようなダイナミックな

ストーリーが描けるかどうかということになる。



尾道の弱点は、

「肝心の港町に関連した歴史遺産である港湾施設そのものが

あまり残っていないことだ」という毛利さんの厳しい指摘もある。

しまなみ海道建設にともなう再開発で、

駅前の景観はすっかりこぎれいに変わってしまい、

雁木は防潮堤に姿を変えた。

マンション建設のストップや、空き家再生など町並み保存の努力は、

行政と市民の手によってすすめられてはいるが、

いっぽうでは工場誘致をすすめ、海岸通り再開発、駅前整備などは、

歴史遺産を失う道の選択でもあり、

世界遺産登録は容易ではなさそうです。

しかし、

世界遺産登録にふさわしい町づくりをめざすことは、

結果的に美しい町ができることだ」

という前市長の亀田さんの言葉に、わくわく亭は賛同するものです。