ソマリア海賊は女にもてもて?

ソマリアの海賊って、知ってますか。

カリブ海の海賊なら映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』で知ってるって?

カリブ海ではなくて、アフリカのソマリア沖の海賊です。

海上を航行する各国の船を、どこの船だろうと襲って捕らえ、船と船員を人質にとって

大金を稼いでいる現代の海賊たちです。

いま日本政府は海上自衛隊の艦船を、このソマリア海域に送って、頻発する海賊行為

から日本の船舶を保護する警備行動をすることを検討しています。

だって、2008年だけでも111件の海賊事件が発生して、日本の船も3隻が

被害に遭っています。日本の船舶だけでも年間に2000隻以上が、この海域を

航行しているのです。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、インドなど主要国は

軍艦などを派遣して自国の船舶保護にあったているので、日本はスローすぎると

いわれています。

国連はこれまで4回も海賊取締をもとめる決議をしており、日本にも艦船派遣を

要請してきています。

ソマリアがどこにあるのか、アフリカの地図を見てください。

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船が地中海から紅海を通り、アデン湾へと抜け出てきたとき、アフリカ大陸の東端に

ぶつかりそうになります。その尖った角の形をした国がソマリアで、「アフリカの角

と呼ばれるのは、その地形のためなのです。

国境は西でエチオピアケニアに接しています。

ケニアといえば、新アメリカ大統領オバマさんにとって父祖の地です。)



ソマリアでは何故海賊が野放し状態になっているのか?

1991年からソマリア無政府状態になっています。

そのため海賊を政府が取り締まる能力も力もないからなのです。

海賊行為はやりたい放題。

ソマリヤの若者のあこがれの対象は「海賊」なのです。

海賊はかっこよくて、女の子にもてもてなのです。

なぜそんなことに?

ソマリヤという地名を知らなくても、アメリカ映画『ブラックホーク・ダウン』なら

聞いたことあるでしょう。

クリントン大統領の時代に、ソマリアの治安維持のため派遣された米軍の戦闘ヘリ、ブラック・ホーク

が首都モガディシュ近郊で撃墜された事件をもとに作られた映画です。

つぎの写真はグーグル画像から拝借したもので、荒廃したモガディシュの不気味な静寂が映されて

います。

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その撃墜事件後、アメリカはソマリアから撤退しました。

ソマリアでは泥沼の内戦状態がつづき、国家は事実上破綻していました。

しかし、一時、イスラム原理主義の勢力が統治に成功します。厳格な戒律をもって盗賊を

取り締まったので、山賊も海賊も姿を消しました。

ちょうどアフガンにおけるタリバン政権による平和が実現していたのです。

ところが、アメリカはイスラム原理主義国家はテロリスト国家だとして許しません。

アフガンのタリバンと結託しているといって、ソマリアイスラム政権を潰しにかかります。

お隣の親米国家エチオピアをたきつけて、数千人のエチオピア軍を侵攻させて、イスラム政権を

首都から排除しました。

イスラム政権は1年あまりの短命政権となり、ソマリアはもとの泥沼の破綻国家、無政府状態

逆戻りです。

その後エチオピア軍は、ゲリラに手を焼いて、結局撤収してしまい、アメリカが援助した臨時政府は

名ばかりのものがモガディシュにあるばかりです。

さあ、こうなれば、海賊たちはふたたび跋扈して、いまやソマリヤの収入は海賊行為による

外貨稼ぎに頼っているという、信じられない事態になっているのです。

つぎの写真はWIKIPEDIAに使われていた写真で、米軍の艦船から撮影したものだそうです。

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どうです、海賊の若者達はかっこいいですね。

ソマリヤは人口が900万人いて、そのうちの300万人が極貧生活をしており、国連などの

海外援助に頼って生きています。

貧しい人々は漁業で生計を立てていたのですが、アジアやヨーロッパから来た漁船が彼らの

漁場を不法に荒らしても、政府が排除することもできないので、自分たちが武装して外国

漁船を追い払うことにしました。

それが海賊になったのだそうです。

船舶と乗組員を捕らえて、人質にします。それをカタに身代金をとるという海賊ビジネスです。

1隻の身代金が1億円が相場ともいわれます。

1年で5000万ドル(50億円)も稼ぐらしい。

いまもソマリアの海岸近くには捕らえられた船が30隻ばかりあるそうで、身代金の交渉中でしょう。

1月23日の朝日新聞に、駒野さんというソマリア担当のエチオピア大使のインタビュー記事が

ありました。大使はこんな話をしています。

海賊のリーダーは現地では「もっとも女性にもてる存在」という。

荒稼ぎした金で海岸の一等地に豪邸を建て、豪華な結婚式を挙げる様子がアフリカの新聞や

雑誌で取り上げられ、豊かな生活の「象徴」になっている。

海賊は現地の若者たちのあこがれの職業になっている。

アフガンでは金儲けのために貧困層がケシ栽培に走ったが、同じ事がソマリアでは海賊として

起きている。

2008年11月20日の共同通信によれば、海賊たちの繁栄振りがつぎのように伝えられています。

ソマリアでは無政府状態がつづき、貧困にあえいでいた沿岸部の町が、身代金で得た海賊たちの

落とす金で繁栄を謳歌している。

沿岸部のハラデレなどの町は「海賊経済」で栄え、四輪駆動車を乗り回し、石造りの家を建てる

海賊もいる。

ハラデラには、補給のために毎日海岸に戻ってくる海賊のために、タバコや食料、飲み物を

売る店が出る。

店主の女性は「海賊達はわたしたちに頼り、わたしたちもそれで儲けている」という。

身代金の受け渡しは必ず現金で行われ、ヘリコプターから現金入りの麻袋をおとしたり、

防水のスーツケースがつかわれる。

人質の扱いも丁重で、人質のためにスパゲティなど欧米風の食事をつくらせて、配達させることも

あるという。

上記の駒野大使は、

「国際社会が連携してソマリアを破綻国家から抜け出すよう導かない限り、海賊問題の根本的な

解決にはならない。」という。

それにしても、21世紀の今日、まるで2~3世紀ほど後戻りしたような海賊天国が現実に

あるのです。

ネルソン提督に再登場ねがわねば、海賊を一掃することはできないのでは?