「キヨノの話」新聞評
「姫路文学」126号に発表した短編「キヨノの話」を神戸新聞の同人誌評(4月27日)
が取り上げてくれた。好評のようで、ありがたい。
森岡久元の「キヨノの話」は、主人公「私」の母の叔母キヨノの数奇な人生や、その姉サトの死の 顛末を、古くから伝わる夜這いや蛇伝説に絡め、土俗的な物語に読者を誘い込む巧妙な作品だ。 昭和19年、私たち3兄弟と母とキヨニは疎開で母の郷里尾道に帰るが、キヨノはそこで死ぬ。 私にとってキヨニは子供心にも畏敬の対象であり、機嫌が良い時にはわらべ歌〈朝早よ起きて東山見 れば猿が三匹跳びょうた…〉を歌ってくれた。この歌は常にBGMのように作品の背景に流れ、 私がキヨノを思い出すメロディーであり、キヨノの語りへ至る前奏曲でもあった。 サト、キヨノ姉妹とサトの幼友達チリは瘡神池(かさがみいけ)へ。 夜這いに来る男自慢をするサト。秘やかに笑う若い女たち。やがて皆は池畔の土手でうたた寝 を始めるが、サトの股間に蛇が入りこむ異変が起き、サトはそれが原因で死ぬ。 物語は、私がわらべ歌を口ずさむところで終わる…。