「解錠師」
小説。
ハヤカワ文庫、定価940円+税。文庫にしてはいい値段だ。
第一位に選ばれたのだから、どこの書店でも手に入ると思ったが、そうではなかった。
ハヤカワ文庫は海外ミステリーだが、ちかごろはミステリーも日本作家の文庫本がよく売れる
ようで、ハヤカワ文庫はあまり揃えていない。
それでも書店へ寄るたびに、この文庫本がないか気をつけていた。
駅の南口近くの書店、そこはハヤカワ文庫はほとんど置いていない店であるのに、評判が高くなった
せいだろう、この「解錠師」だけ3冊入荷しているのを見つけた。
ようやく手にすることができた。
570ページもある分厚い文庫本だ。これなら940円+税の値段がついてもおかしくないか。
ミステリーではあるが、どちらかといえば、ミステリー仕立ての青春小説。
ある少年が、家庭崩壊の深刻な体験から、言葉が話せなくなる。
孤独な彼は、ひょんなことから解錠に興味を持つが、天才的な才能があることに気づく。
その才能のために犯罪グループに利用されるようになるのだが、あるところで、言葉は話せなくても
絵を描くことで心をかよわせることができる美少女と出逢う。
事件に巻き込まれて入獄した少年が、獄中でつづる回想記が小説になっている。
なかなかクールな少年少女の恋愛小説であり、さまざまな種類の錠前を解錠するシーンが斬新で
面白い。出獄後、彼を待っている少女との再会を予感させて、長い物語が終わる。