土門拳の『風貌』(7)
劇団「民芸」の滝沢修さんである。
伝説的な名優といわれる新劇俳優であり、演出家だった。
1906年の生まれで2000年に没しているから、94歳という長寿だった。
脂がのりきった頃の45歳だった。
いかにも精力的で、体力にも自信が溢れていそうな風貌である。
滝沢さんはアマチュア写真家としても、いい腕だったそうで、このときも
もっぱら写真談義ばかりしたようである。
土門さんは新劇の芸談をさせたがったそうだが、乗ってこなかったそうで、
《滝沢さんは決して芸談を話さない。
僕が写真の話から舞台の演技などの問題へ誘導しようとしても、
決して乗らない人だった。
滝沢さんの謙遜な人柄がそうさせるのかも知れなかったが、
僕にはそれが強く印象に残った》