寝ぶとり
この図を『百物語』ではなくて、浮世絵の一枚だといわれたならば、「女相撲取りの昼寝」
でもあろうかと思っただろう。
「寝肥」(ねぶとり)という女の病気であると絵師は云っている。
たしかに、アメリカなどに、身動きできないほどに体重がふえてしまい、手術をうけることに
なる女性を映像でみることがあるから、肥満は病気として治療を必要とするケースもある。
江戸時代の日本にも、そうした過剰な肥満を病気とみなしていたものとみえる。
説明によると、
「寝肥はかならず、大鼾(おおいびき)をかいて色気なく、ものごとにつけて
騒々しいから、愛想も尽き果てる。寝相の悪い女は、これも変化(へんげ)の一つである」
というから、女性が聞けば「男もそうでしょう。なぜ女ばかりが変化(へんげ)なのさ」と
立腹なさるであろう。
ごもっとも。
ごもっとも。