「バガボンド」熊本へ罷る
八重洲ブックセンターの7階は美術、芸術、グラフィック、洋書の売り場である。
井上雄彦の名前がついた雑誌を見かけたから、すぐに買った。
「ぴあ」といったらチケット販売の会社じゃないか。そこが「井上雄彦ぴあ」という雑誌を出すとはね。
販売は「ぴあ」が受け持っていた。
それは井上が雑誌連載中の『バガボンド』のイラストを中心にした美術展だった。
「最後」のはずが、あまりの好評と人気から「最後のマンガ展・重版」と銘打って熊本で開催する
ことになった。もちろん「ぴあ」が主体となっている。
4月11日~6月14日までのおよそ1ヶ月。
開催企画に乗ったということらしい。
『バガボンド』は29巻が刊行されており、まもなく30巻が発行となるらしいが、すでに
10年も描き続けられている。
という現象が起きている。
「ムサシ」といえば、『バガボンド』
「おつう」といえば、『バガボンド』なのである。
さて、この雑誌をというか、「ぴあ」のカタログのような冊子を買って帰ると、
わくわく亭の息子が、
「へえ。それ買ったの」というから、
「お宝だろう」と自慢しようとしたら、
とんでもない。
「コンビニでいま売っているからさ」だって。
ああ、「ぴあ」にやられたか~、という気分。
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武蔵が京都の吉岡一門と決闘する場面で、マンガ25巻から27巻まで70人を斬るのだが、
それについて、
尾田「人を斬るシーンは、描いていて辛くなりませんか?」
井上「辛いんです。あれだけ多く人を斬るシーンを描いていると…」と語っている。
人を斬って闘いに勝利しているはずなのに、それが信じられなくなるという。
勝利の価値を疑ってしまう。それではマンガが描き続けられなくなる。
井上「勝つことって、本当に勝利なのか?いいことなのか?と。矛盾した感情にかき乱されて、
辛かったですね。ただ、まさにそういう感情を体験するために、わざわざ70人も斬るところを
描いたわけなんですけど」
武蔵が作中で、勝利の意味を疑う場面があるのだが、それを描いていた井上雄彦がまったく同じ
感情を体験していたわけであり、その内的体験が作品に奥深さを与えているのだ。
たいものである。