変にけんそんする人

 へんに謙遜(けんそん)する人っているよね。こっちは相手をほめてる訳でもないのに、なんでも自分の都合のいいように解釈して、いえ、なに、それほどでもないよ、なんて謙遜するタイプ。

 『春笑一刻』(安永7年)から「肥満」という超短い小咄。なおついでながら、本のタイトルは「春宵一刻直千金」のもじりです。(わかっているって?ごもっとも)


       《肥満》
  
   「貴公(きこう)はよくふとっている。さりとは、うらやましい」といえば、
   「ナニサ、このように見えても、半分は垢(あか)さ」


 つぎは『うぐひす笛』(天明年間刊行)から。

 題の溲瓶(しびん)を知らない世代のため、老婆心で説明すると、トイレに行けないような病人が布団の中で、小便をするためにつくられて道具のこと。江戸時代には陶器のものが使われていた。

 テレビの「なんでも鑑定団」ではないけれど、いつの時代にも、骨董品や道具を自慢する人、また自慢したいくせに、へんに謙遜する人はいます、います。


       《溲瓶》(しびん)

  文盲な男、客のもてなしに、何かめずらしい物に花をいけんと思い、しびんを買って花をいけ置きければ、
  客、これを見て、ふしぎそうに、
  「モシ、この花生けは、しびんではござりませぬか」
  亭主、
  「いや、さような名のある道具ではござりませぬ」