『文政6年の花の雲』への中野朱玖子評

 
 10日の記事につづいて、きのう届いたばかりの、詩人中野朱玖子さんからの評も紹介させてください。中野さんは今年第3詩集『詩苑物語』を角川書店から出されたばかりですが、平成16年には第2歌集『乱 鈔掠』(角川書店)を出しておられて、俳句、短歌、詩と縦横に才能を発揮されている、いま円熟期の詩人です。
 
 がさつものの、僕わくわく亭が彼女に返事を書くとき、いつも自分の下手な筆跡が気になってしまうほど、彼女からの手紙は毛筆による優美な筆跡です。

 その優美な筆跡で、このようにしたためてあるのです。わくわく亭が「わくわく」するはずではありませんか。

《……もう、すべて筆者の手の内――見事な練達なお作、想像以上にたのしませて頂きました。あるいは南畝(もの)の中で一番に好きかもしれません。まさに江戸文化の花の盛りを遊歩しつつ、その終焉へ――過不足のない豊饒の描写の中をたゆたいます贅沢。鴎外よりのひもときも興をたぐられ、前世にさかのぼります奇談のさまざまへの巧みな描写の運び……やがて南畝と、すっかりなじみの登場人物らの死出の道行きも、花のなごりの余韻の中に納められました技は、筆者の独壇場ともいうべき味合い、たっぷりとたのしませて頂きました……》

 これで、本作出版のお誘いが、角川書店からくれば、大団円ということになるのですが(そんないい話があるわけないか)。