『深夜音楽』評

TKさん(女性)から長い感想文が送られてきた。彼女の夫は、わくわく亭と同人誌仲間だったが、

数年前に他界している。だからTKさんは現在は一人暮らしである。

(略)中で、最もおもしろかったのは「にらむ女」です。

たまたま同時期に渡辺淳一の「ふたたびの愛」を読んでいました。その途中でこの「にらむ女」

をはさみました。まったくの偶然です。『深夜音楽』をぱらぱらとしていて、この作品で止まった

のです。2作品の題材がちょうど老年に差し掛かった男性の不能を扱っていて、リンクしたような

ことです。

渡辺のは知名度も高く、新聞でも取り上げられていましたし、わたしも図書館で見つけて読んで

いたようなことです。結論から言うと森岡さんのが「文学」です。文章に雅味があります。渡辺の

あんな荒い即物的な文章が小説として売れるのかと感じました。「大家」だからなんでしょうね。

ただ不能の男性が女性を喜ばすことに重きをおいて性行為に至るのだと決心して高齢になったと

主張するくだりは、女性としては大拍手。世の男性たちがそんな風に女性を喜ばすことに腐心

すれば世の中は平和かも。ただし、個人的にはわたしにはパートナーがいないので関係ないです。

(略)

「別称橋のできごと」のように、夢かうつつか、妄想か現実か、といった兆候がわたしにもあるので

おもしろかったです。わたしもますます境目があいまいになってきていますが、これが歳をとる

ことでしょうか。たんに痴呆が出てきただけ?それならちょっと怖い。一人暮らしのわたしには

切実な問題かも。

(略)