『深夜音楽』評
関西の同人誌に小説を書いているTAさん(女性)から『深夜音楽』の感想をもらった。
彼女はまだ40代かな?わくわく亭よりうんとお若い、才能豊かな作家だ。ごく最近ある文学賞で
作品が佳作入選になっている。
(略) 「酩酊船」の合評会で初めてお会いしたときにも申し上げたような気がしますが、今回も何点か、 やはり強烈な部分を感じ、面白く読ませていただきました。 幻想的といいますか、シュールな感じで展開していく物語なのに、常に足は地についていて現実感が ある。だから読者は小説世界の中へするっと気づかないうちに引き込まれている。最後までぐんぐん 読ませてしまう。このテクニック、学びたいです。よくあるファンタジー小説などでは、作り物の 正体が見えてしまって興ざめすることが多いですが。 私は「別荘橋のできごと」にいちばん惹かれました。ありそうでなさそうで、なさそうであり そうで……、作者の術中にまんまとはまってしまって、読み終えたときには、わけのわからない 靄の中に放り出された感じ、でもそれが気持ちいいのですよね。文章が上質だからでしょうか。 この作品は「酩酊船」で初めて読みました。そのとき少し興奮して、T先生に「この作品すごい!」 と感想を送った覚えがあります。読み直してもまた興奮しました。 同様に面白かったのは「ハナトラノオ」です。狐につままれる快感で拝読しました。洒脱な感じの 文章も、いい気持ちにさせる原因だろうと思います。他の作品もついつい引き込まれてしまい、 一気に読み終えました。面白い本を、ほんとうにありがとうございました。