見納めの高宮檀邸

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友人で、ノンフィクション作家だった故高宮檀さんの邸宅が国庫帰属になった。

彼は独身のまま、両親から受け継いだ立派な邸宅で、数匹の猫と暮らしていたが、

3月12日に心筋梗塞のために路上で倒れ、翌日未明に死亡した。

相続権者がいないために、家屋敷は蔵書とともに国庫に帰属することになった。



10月20日、裁判所が指名した管財人の弁護士さんが立ち会って、友人数人が

邸内に入り、高宮さんの最後の生活の痕を見ることになった。

仏壇はあるが、遺骨は菩提寺に納骨されているし、位牌は無かったが、

空の仏壇に線香をあげて、お別れをした。

二階には、猫に食事を与えてたらしい皿が三枚、汚れたまま床に残っていた。

無人の家の中は、とりちらかっていて、胸が痛んだ。



彼の著書『密封された聖地ー天理教一方井事件』『芥川龍之介の愛した女性』を書くために

収集した資料や文書がビニールの袋につめて、いくつも廊下に並べてあった。

彼の作品執筆のための努力と執念の記念品である。

不動産業者が、この屋敷を入札で裁判所から買い取れば、燃えるゴミとして処分される

ものなのだ。

廃棄されてしまうのがしのびない文書を選り分けて、3個のダンボールに収め、

わくわく亭が引き取ることになった。

管財人の弁護士さんとの約束は、午後1時から4時までの3時間だった。

4時になって、全員が屋外にでると、弁護士さんによって入り口の鍵がかけられた。

年内には、不動産業者に売却されるという。

建物は壊されて、更地になることもあるだろう。

見納めの高宮檀邸である。

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