男どもの会話とは…
日曜日は、ここのところ毎日やってくる大工さんたちも休みで、家の中は静かである。
女房も息子も出かけているから、わくわく亭は一人で、庭のカルミアの写真を
撮っていた。
花はつぼみで赤いが、開花すると白くなる。赤いうちきれいなのでカメラを持って
庭に出ていた。
インターフォンが鳴ったから、玄関のドアをあけると、内装屋さんである。
「大工さんは来てますか」
「いや、今日は日曜だから、お休みですよ。弟さんに誘われてゴルフに行くとか
聞いたよ」
大工さんが女房と話しているのを聞いたのである。
「へえ、ゴルフか。いえね、昨晩電話で話したときに、日曜だけど、ちょっと
やりかけのを仕上げているから、と聞いたから、相談したいことがあって寄ってみたんだけど。
わたしは明日の月曜日に洋間のクロス張りをやりますから。またあした。
そうか、ゴルフか。今日はゴルフにはいい天気だよ」
内装屋さんは、洋間の下地を検分して、そのまま帰って行った。
さきほど女房が帰ってきたから、以上の話をした。
すると、
「うちじゃなく、別の現場に今日は行くって話をしてたのよ。弟さんにゴルフを
誘われたけど、やりかけのままにしてある現場があるので、日曜日だけどそれを
仕上げるから、ゴルフは断ったって話していたの」
「大工さんと内装屋さんは、電話でトンチンカンな話をしたんだな。うちと別の現場を
取り違えるとはね」
「あなたもトンチンカンでしょ。いいかげんに人の話を聞いているから、ゴルフへ
行ってるなんて言ったりして」
「そうだ。こんな簡単な話を、3人が3様に聞いているんだからね」
「男たちは、一方的に自分の話ばかりして、相手の話はろくに聞いていないでしょ。だから
そうなるの。ほんとうに、男達の会話って、自分勝手だから。あなただってね…」
「ごもっとも」
攻撃の鉾先がこちらに向いてきたから、
わくわく亭は二階のパソコンの部屋へと逃げる。