象を食べる
新聞の投稿欄で象を食べた話を読んだ。
87歳の男性からの戦争体験の投稿でした。
日本全国の主要都市が米軍機によって空爆を受けるようになり、
動物園では猛獣処分が行われるようになり、たとえば上野動物園では3頭の象が
逃げたら危険だと殺処分されました。
投稿者は熊本の陸軍師団の下士官でした。
熊本でも水前寺の動物園で、虎、ライオン、象が処分されました。
そして、その殺された猛獣の肉が、食糧不足の兵士達に放出されたということです。
歩兵隊にはライオンの肉が、騎兵隊には虎の肉が渡ったという噂を聞いたそうです。
終戦の年である1945年春、彼の部隊に1頭の象が支給されました。
それから1週間ほど、毎日象の肉を食べました。
兵士たちは食糧難で飢えていたから、当初はよろこんで食べました。
3日目からは、ほとんどの兵士が食べ残すようになりました。
象の肉は赤身の部位でさえ、汁に浮くほど脂肪が多く、消化も悪く、とても食用には
むかないものだったそうです。
飢えていた兵隊達が食べられないというのだから、よほどひどいものなのでしょう。
象の皮はなめして軍靴の修理に使うことになりましたが、水に弱く、ふやけて
使い物にならなかった。
「いやまったく、思い出したくもない、大変な時代でした」と投稿は結ばれています。
猛獣の肉というと、ずいぶん昔に、北海道からのお土産に熊の肉の缶詰をもらって
食べたことがありましたが、熊の肉も脂こくて、一口食べて、すぐギブアップした
のを憶えています。
象は食べたいと思いません。