硬直化した日本的システム

テレビの朝日ニュースターで、「東日本大震災 世界が見たNIPPON」という

番組を見た。司会が葉千栄(東海大教授)で、ゲストにオーストラリア、イタリヤ、フランス

韓国のジャーナリストを招いて、日本の緊急事態への対応の仕方について討論した。

被災者が秩序を保つ行動をとっている現状を見て、世界は感動し、賞賛している一方で、

政府や官僚の危機対応が遅すぎるのを批判的に見ている。

上から下まで、マニュアルがないと機能しないのがその原因で、平時は秩序のある機能を

果たしているが、予期しない、つまりマニュアルのない緊急事態が起きると、パニック

を起こしてフリーズしてしまうのが日本的特徴だという。

ゲストの一人でグレゴリー・クラーク(多摩大名誉教授・ジャパンタイムスコラムニスト)

阪神淡路大震災のときの話を例にあげた。

神戸に火災が広がって、消防車による消火活動が困難なとき、なぜ自衛隊に要請して

ヘリコプターによる海水投下による消火ができないのか対策本部に質問した。

海は目と鼻の先にあるのだから、海水で空から消火すればいいではないかと。

しかし、それは実行されなかった。

理由は、空から何トンをある水を投下して、倒壊した建物の中に取り残された人を

圧死させる恐れがあるからだという返事だった、という。

つまり、マニュアルになかったから、その方法を現場で即決して決断実行できる責任者がいない

というのが日本的システムの弱点だという。

今回の福島原発事故対応でも、原子炉内の圧力が高まり、爆発の恐れがあると分かっていながら

ベントを決行するのが、マニュアルになかったため、現場では決断ができなかった。

社長も、会長も東京にいなくて、首相官邸監督官庁である経済産業相がただちにベントを

しろと命じたにもかかわらず、東電の現場はパニックでフリーズしてしまい、ベントが

遅れた。そのために水素爆発を起こして、今日の深刻事態となった。

アメリカ人はパニック映画が好きだ。

タワーリング・インフェルノ」「タイタニック」など、緊急事態に、マニュアルに記述

されていない事態に遭遇したとき、いかに対処して切り抜けるかをテーマにした映画だ。

現場のリーダーの決断。「想定外」の事態への対処。

これが硬直化した官僚システムの日本では「想定外」に対処できない。遅れてしまう。


番組は何度も再放送をするだろう。

啓発をうける討論だと思う。