福島原発事故はいつ収束するのか


この録画は原子力資料情報室が主催する院内集会で、福島原発の格納容器を設計した

東芝原子力設計技術者の後藤政志氏による講演である。

事故の内容、危険度、安全性の問題、いつまで緊急事態は継続するのか、等々を

設計当事者としての重い反省を込めながら、たいへんに

参考になる講演である。


ゲスト出演して、福島原発で何が起きているのか、くわしく解説している。


日本の原子力安全委員会が、原子力発電を推進するために、安全基準のハードルを下げて

来たことが、今回の東日本大震災による福島原発事故の原因であることがわかる。

一例は、将来の大地震による津波の高さ予想を、5メートルとして原発設計していることだ。

実際には15メートルの津波に襲われて、すべての電源が破壊されて緊急事態となったのである。

原発はいかなる不測の事態にも対応できる安全設計をするが、究極の安全は獲得できない。

それでは経済的に電力発電ができないという限界点があるからである。

どこかで、「想定外」の1000年に一度の危険な可能性とか、隕石にあたるほどの確率

といった危険性は、設計から落としてしまう。

福島原発は、もともとアメリカのGE社が開発した機械であり、東芝と日立が改良した

ものだそうだが、35年まえにGE社の原発技術者2名が、この原発の欠陥を警告して

辞職したというシロモノらしい。

今回の事故発生で、技術者の一人フライデンボ氏がロイターのインタビューで語っていた。


炉心が爆発すれば最悪の事態になる。

それを防ぐためには、炉心と使用済み核燃料を冷却しなければならない。

そのためには、電源、ポンプ、水が不可欠である。

いつまで冷やしつづけることになるのか。

7~8年程度は続けることになるだろう、とのこと。

アメリカのスリーマイル島原発事故では、炉内を見ることができるまでに、10年かかっている。


「ベント」というバルブがある。

格納容器の中の圧力が高くなりすぎると、爆発のおそれがあるから、放射能を含んだガスを

外に出すため、このベントを開いている。

そのために空気中に放射性物質が放出されている。

これからも、格納容器の内部圧力を測りながら、ベントからの放出はくりかえされることになる。

放射能汚染はつづくという結論なのだ。


フランスの同種類の原発では、ベントから出るガスに巨大なフィルターがつく。

それを義務化している。

しかし、日本ではフィルターはついていない。

ベントを開くという事態はありえないから,原子力安全委員会は必要という指針を出していないから

である。

まさか、といまになって安全委員会の学者達は、青くなって、沈黙をまもっている。

巨大地震、大津波、それによる電源喪失

スマトラで40メートルの津波が起きたときも、安全委員会は「福島沖では起きえない」と

考えた。

そうしたありえない大事故を「過酷事故」と呼ぶそうだが、

1994年ころに、過酷事故がおきることはありえないが、万一起きたための対策を

安全委員会は「義務ではないが、民間が自主的に対策する」ことを容認したそうである。

電力会社にとって、巨額の「過酷事故」対策はとるはずがない。

義務化ではなく、ただの自主的対応なのだから。

そうしているうちに、東日本大震災が起こり、15メートルの大津波福島原発を襲った。

「過酷事故」が起きたのである。

これが、日本の原子力発電の安全委員会の実態だったのである。

自民党、電力会社、東芝や日立のメーカー、そして原子力研究学者たちが、県知事や県議会

をまきこんで,安全神話を創ってきた。


さて、これから、どうなるのか。

福島原発の1~4号機は格納容器が一部破損しているとみられている。

ひたすら燃料棒と炉心の冷却をつつけて、現状維持をする。

放出される放射性物質の量を可能なかぎり最小にしながら。

数年間という危険と不安な時間を、国民は耐えていくことになる。


以上が、後藤政志氏の話である。