死んではいけない、日本人

警察庁の発表によると2010年の日本人の自殺者総数は31,690人だった。

これで13年連続で3万人を超えたことになる。

理由は色々あるだろうが、先進国では異常なほど高い自殺率である。


エジプトで民衆蜂起が起きてムバラク大統領が追放されたとき、テレビ番組に

エジプト出身の女性タレントであるフィフィさんが出演して、エジプト情勢を解説していたが、

その中で彼女はこんな話をした。

「エジプトは人口が8400万人もいるが、農業と観光以外に産業がないから、働く仕事がない。

それでも自殺する人はほとんどいない。チュニジア焼身自殺をした若者のニュースが反政府

デモのきっかけとなったが、チュニジアでも貧しくても自殺するものはいない。

そのエジプトで、350人の犠牲者を出しながら、民衆革命が起きた。

350人の尊い犠牲がエジプトの政治体制を変える礎になった。

ところが、日本はこんなに豊で平和なのに、毎年3万人以上の人が自殺をしている。

外から見ると、どうして死んじゃうの、と信じられないのです」


フィフィさんの話はどれくらい正確なのだろうか。

調べてみた。国連機関WHOが発表している2009年の国別の自殺率統計がある。

人口10万人あたりの自殺者数が自殺率とされている。

世界103ヶ国の統計で、日本は第6位で24.4である。人口がおよそ1億3000万人と

すると、自殺者数はおよそ3万2000人になる。

日本より上位の国はベラルーシリトアニア、ロシア、カザフスタンハンガリーで、

旧ソ連圏諸国で政治体制の変革途上にあって様々な困難を抱えている国々である。

では、経済的に貧しく国民の30%が仕事もないという、つい先日まで独裁国家だった

エジプトはどうか。

0.0%なのである。

10万人あたりの自殺者数は1人以下だということで、フィフィさんの言葉は正確だったのである。


では、いままさにカダフィ独裁に反旗をひるがえして内乱状態にあるリビアはどうか。

0.1%である。リビア人口はおよそ640万人とされるから、年間の自殺者は6人。103ヶ国

中の97位である。


フィフィさんが「どうして日本人は死んじゃうの」、信じられないというのは当然だろう。

では、先進諸国と韓国、中国はどうなのか。

 9位 韓国   21,9
19  フランス 17.0
26  中国   13.9
43  USA  11.0
67  英国    6.4
68  イタリア  6.3

あの悲惨で長期に及んだベトナム戦争で戦死したアメリカ兵の総数は4万7000人(別の

資料では約5万人)だった。

平和で経済的に豊かな民主国家、医療先進国の日本で、毎年米軍のベトナム戦死者に匹敵する

ほどの自殺者を出している日本。

他方エジプトではゼロ。

これは、やはりおかしい。

死んではいけない、日本人。