私たちの身体は何でできているのか
素粒子物理学者が書いた本が数十万部売れる超ベストセラーになっている。
村山斉著の『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)
文化系のわくわく亭であっても知りたいテーマだから、読みました。
知的好奇心が刺激される内容だから、スリリングで面白い。800円はお得の本です。
宇宙は何でできているのか。2003年というから、つい最近になっていろいろと
分かってきたらしい。宇宙を観測する技術的進化と、目に見えない素粒子の研究によって
分かってきたという。
この「宇宙のエネルギー」というグラフを見て下さい。
宇宙のすべての星や銀河をあわせても、宇宙全体の0.5%にしかすぎない。
星はすべて原子でできているが、宇宙には銀河の中に漂っていて光らないから目には見えない
ガスも、原子でできている。それらを合わせても4.9%にしかならない。
ほとんどは、暗黒物質とか暗黒エネルギーでつくられているのだそうです。
宇宙はビッグバンから始まり137億年かけて現在の大きさまで膨張してきたのです。
星にも寿命があって、太陽もあと45億年で水素を使い果たして寿命が尽きるそうです。
寿命を迎えると星は爆発して内部の元素をばらまきます。ばらまかれた元素が集まって
また次の星が生まれます。
それを宇宙はくりかえしているのです。
その爆発のことを「超新星爆発」というのです。
地球も宇宙空間にばらまかれた元素、なかでも酸素、炭素をあつめて、わたしたちの身体を
つくったのだそうで、「私たちの体は『星くず』でできているのです」とのこと。
よく、だれか肉親が死ぬと、夜空を仰いで、子供達に「死んだら星になるのよ」と
言い聞かせてきましたが、それは間違いではなかったのです。
わたしたちの体は,死んで骨になったとしても、炭素という元素にもどるのです。
炭素になったわたしたちが、地中に埋められて土になったとしても、海に散骨されて
海底の砂になっても、それは「星くず」に戻ったことになる。
そして数十億年すれば、地球も「超新星爆発」して、私たちの「星くず」もろとも
宇宙にばらまかれていくのです。
私たちは「星くず」から生まれ、「星くず」にもどっていく宇宙の運行にしたがっているのです。
とすると、「千の風になって」というフレーズも正しいといえます。
2007年10月2日に、わくわく亭は「前田陽一遺稿集」という記事を書きました。
紹介しました。(http://bit.ly/fA7Iz3)
わくわく亭が好きな文章なので、その部分を再び紹介します。
早春の峠道を父が息子を肩車して保育園から帰ってくる場面。 空の飛行機雲を見上げながら、病院で死んだ父の知人のアメリカ人のことを語る。 息子「死んだら天国に行くの?」 父 「そう、天国に行く」 「どこにあるの」 「宇宙にある。天の国だから。すごくきもちのいいところだと思うよ。 1/fのゆらぎで、ゆらいでいるところさ」 「なにそれ」 「気持ちのいいものには、みんなふくまれているものさ。たとえば、そよ風、小川の せせらぎ、星のまたたき、それから、きれいな音楽や、気分のいいときの心臓の音。 (略)それを1/fのゆらぎ、というんだな」 (中略) 「150億年ほど前にこの宇宙ができた。その前というのはなんにも無いところだっ たんだ。いや、なんにも無い,も無かったんだ」 「へんなの」 「そのへんなところが、ふと、ゆらいだんだな」 そして生まれたのが宇宙。光のつぶが生まれ、光からつぎつぎ星が生まれ、 ふるくなった星は超新星というものになり爆発する。爆発したものが、 またあつまって地球になり人になった。だから…… 「君も父さんも、みんな星のかけらなんだよ。そして死んだら1/fでゆらぐ 気持ちのいい天国や極楽にもどっていく。だから、死ぬことは決して哀しいことでも 怖いことでもない。地球に遊びに来たくなったら、 いつでも風になったり雲になったり、花になって咲いたりして、遊びにこれるのさ。 ほら、病死したお母さんが小鳥になって遊びにきているかもしれないぜ」
わくわく亭の死生観は前田さんのそれと、とても近いです。
わたしたちは、みんな宇宙の星くずだった。