…で、よろしかったでしょうか?
電話が鳴る。
「○○さんのお宅でよろしかったでしょうか?」
よろしかったでしょうか?という言い方に、すでに不快感をおぼえている
「そうですが」
「ご主人さまでいらっしゃいましょうか?」
まず電話した方が名乗ってしかるべきだろう。
「どちらさまですか?」
「△△社といいまして、今回□□をご紹介したいと思いまして電話をとらせていただきました」
電話をとらせていただきました、という言い方を誰が開発したのか、やたら電話セールスで
使われるが、それを聞いただけで、不快感はいや増すのである。
こちらは、電話を切るタイミングを計っている。
しかし、いきなり切ることはできないから、一応用件は訊く。
「ご用件は?」
「いま、地球温暖化で、世界的な農作物の被害や収穫減少が起きていることは、ご存じでしょうか?」
ここで、下手な返事はできない。
面倒がって、いや、よく知らない、と答えようものなら、
「ええええ?ご存じないのですか。いま大変なことが起きているのですよ…」と滔々と
語られて、電話を切るタイミングを逸する。
では、そうらしいね、と答えようものなら、
「そのために穀物相場が世界的に高騰しているのもご存じでしょうか?」と
たたみかけてくる。
ああ、返事をするんじゃなかった。
「それで、どんな用件ですか?」
不快感を押し殺して、口をきいている。
「穀物相場が急騰して、半年で30%に利益を上げることが…」
「投機や投資の話は、お断りします。電話切りますよ」
「おや、あなたねぇ、半年で30%の利益が上がるという話に興味がない、って一体どんな…」
電話を切る。
あやしげな投機の話に耳を貸そうと貸すまいと、こちらの勝手じゃないか。
とにかく、
「○○さんのお宅でよろしかったでしょうか?」
この日本語を開発したのは誰なのだろう?
ああ、不快な日本語だ。