ドリームウォーカー

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(イラストは近藤聡乃さんの作品)





またしても起きた、アメリカ、アリゾナ州での銃乱射事件。

不安定な精神状態にあった22歳の男性ロフナー容疑者によって、19人が銃撃され、

6人が死亡。女性のギフォーズ下院議員が至近距離から頭部を撃たれて重体である。

CNNテレビで連日詳細に報道されている。

その中で、ロフナー容疑者はアメリカ陸軍に入隊の申し込みをして、不採用になっていたことと、

不採用は検査の結果で麻薬の常習者だったことが判明したのが、その理由だったという。

精神科医は、彼は分裂症の可能性があるから、刑事裁判に問うことはできないといっているし、

犯罪事件に詳しいコメンテーターは裁判になったとしても、精神耗弱状態を理由に無罪に

なるかもしれず、長期刑にはなっても、死刑にはならないだろうとコメントしている。

そんな男が銃器店で、合法的に凶器となった銃を500ドルで買えた。



われわれには到底納得できない事件であるが、どれほど悲惨な銃による犯罪が起きても、

アメリカではきびしい銃規制がすすまない。

自らを「テロリスト」だとネットに書き込んでいたロフナーがターゲットに選んでいた

女性議員もまた、銃の所持はアメリカ人の権利として容認していた。


ロフナーはFACEBOOKにもYOUTUBEにも投稿していたが、

その中に、自分をマインドコントローラーであるとか、ドリームウォーカーであるとか

書いていたようだ。

白昼夢を見ながら、夢の中の自分を、意志の儘に動かすことができる、といったことを

そうした言葉で表現したらしい。

「ドリームウォーカー」で思い出すのは、ジェームス・キャメロン監督映画「アバター」で、

ナヴィたちがアバターを「ドリームウォーカー」と呼ぶのである。


CNNのキャスターはロフナーの状態を「LUCID DREAM」と呼んでいた。

日本語では自覚夢とか明晰夢といわれているもので、夢を見ながら夢と自覚しつつ

夢の内容をコントロールするというものらしい。

そうした自覚夢をみることを、ロフナーは、自分がマインドコントローラーであると

自称したのではないか。

そして映画「アバター」の主人公のように、自分は眠って夢のなかで自分の身代わりの

アバターを自由自在に操って、テロリストになれると信じたのではないか。

彼のアバターが、500ドルで買った銃で、朝の政治集会に集まっていた人々と

ギフォーズ議員を銃撃した。

議員の後頭部を、20センチほどの至近距離で撃ったらしい。

銃弾は脳の中枢部ではなく、外周部を貫通したために、一命は取りとめられそうだという。



だが、

どこまでも、銃社会アメリカの悲劇は繰り返される。

アメリカン・ドリーム」という言葉がある。

しかし、

こんなドリームウォーカーたちが夜な夜な見ている「ドリーム」とは

なんというナイトメアだろうか。