女房、感極まる
11月29日。
わくわく亭の女房が、となり席の息子のダイスケから何かを受け取った。
「ええ?なにかしら」
沖縄旅行の興奮の余熱が冷めていない彼女に、倅は、
「もう一回、サプサイズを、どうぞ」と言った。
それは、ちょっと手の込んだクリスマス・カードだった。
ページを繰っていくと、最後のページに手書きのメッセ-ジがある。
沖縄のジュンとアキナ、そしてダイスケ3人の名前で、プレゼントが貼り付けてあった。
「ウソー、ほんとう?」と女房は声を発してから、しばらく沈黙。
感極まっているのである。
ようやく、感激の思いを飲み込んでから、
「うれしい。ありがとう。夢みたい」と言った。
それは、彼女が数ヶ月前から欲しがっていた、コンサートのチケットだった。
ネットで申し込もうとしたり、オークションでさがしたりしていたが、ペアでないとだめだったり、
法外のプレミアがついたりしていて、ついに諦めていたチケットだった。
それだった。
ダイスケは彼女に内緒に、ネットで入手しておいたのを、いま、
クリスマス・プレゼントとして手渡したのである。
憎い演出を、倅たちはするよ。
「ああ、うれしい。またこれから眠れなくなるわ」
ああ、夜眠れないとは、女房は気の毒だ。