ボクは19歳の沖縄県人です

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沖縄が誇る「美ら海水族館」を見た。

「美ら」は「ちゅら」よ読むのだが、「うつくしい」という意味かと倅に訊くと、

「きよらかな」という意味だと教えられた。

水族館に到着した時間が遅かったから、気がつけば閉館時間になっていた。

われわれが最後の客として館外に出たのである。

外はすっかり暗くなっていた。

大きなウミガメの像の前で写真を撮ったりしているとき、若いカップルが

通りかかった。

数メートル行きすぎてから、ジーパンをはいた男の子が戻ってきて、

「写真を撮りましょうか」と話しかけてきた。

彼にたのめば、家族全員が一緒に写る。

われわれ夫婦、ジュン・アキナ夫婦とミウとミク、そしてダイスケである。

「おねがいします」と女房がいう。

若者は2枚撮ってくれた。

お礼を言ってカメラを受け取る。

若者は、

「どちらから、みえたのですか」と訊いた。やさしい声をしていた。

「私たちは東京からです。この二人は沖縄に住んでいて、結婚して、こんど双子の赤ちゃんが

生まれたから、私たち赤ちゃんを見に来たの」と女房。

「東京ですか」

若者は連れの女の子の手をとりながら、

「ボクは19歳、沖縄県人です。彼女は17歳です」

そう言って、二人は会釈をした。

かれらは、まだなにか話がしたかったのだろうか、何度か振り返りながら、ゆるい

坂道を駐車場に向かって歩いていった。

彼の様子から、彼が彼女に、われわれのことを話しているらしかった。

ただそれだけのことである。

それだけのことが、わくわく亭はなぜか忘れられないのだ。

われわれが、とてもいい家族に見えたのだろうか。

「ボクは19歳、沖縄県人です。彼女は17歳です」と自己紹介した若者は

そのほかに、なにを話しかけたかったのだろう。

なんにしても、ちょっと寂しげな、すがすがしい、

捨てがたい印象を残した「19歳」なのである。



夕食は、倅のアパートが近い食堂街にある回転鮨となった。

東京ではなじみのないサカナの名前が並んでいる。

定番のマグロ、中トロなどは、まるで影が薄い。

ヒラマチ、アカマチ、イラブチャー、タマン、岩ダコといったお目にかかったことがない

のを注文するのである。

わくわく亭が好きなコハダがある。ただし、「トロコハダ」という名前。

ためしに握ってもらう。

たしかにアブラがのったコハダであるが、皮を剥いてあるから、見た目が「コハダ」らしくない。

海ぶどう軍艦」をすすめられるが、パスする。

トンカツにぎり、エビフライにぎり、がある。一皿に2カンのって出てくる。



10時すぎに、わくわく亭夫婦はホテルに帰った。

アキナと双子たちもアパートへ帰った。

その後で、倅2人は、つれだってカラオケに行った。

かれらは「つもる話」が山ほどあったそうで、4軒の酒場をハシゴしてくる。

「おい、明日、東京へ帰るというのに、ホテルから那覇空港までの運転はだれがするんだ。

レンタカーはやめて、ホテルのシャトルバスにするか」と、

わくわく亭は心配するが、女房は、

「ダイジョウブ」とのたまう。