沖縄の海

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11月24日は午前3時の起床だった。

ジュンの迎えの車に乗り込んで、太平洋側にある東村(ひがしそん)までドライブ。

途中ナリタケさん、タノウエさんの車と合流する。

コンビニでおにぎりや飲み物を買って、東村の漁港に到着したころ、まだ朝日は昇っていない。

定員8名の釣り船「遼丸」の船長に紹介された。

タノウエさん(39歳)はこの船長に弟子入りしているという。

彼は岡山の人であるが、海釣りの醍醐味に魅せられて、とうとう妻子をつれて沖縄に

移住してきたというユニークな人物である。

それほど沖縄の海が好きという人だけに、釣りのことも海のことも、かなりくわしい。

無口な船長のかわりに、彼が案内人の役目をしてくれた。

いずれは、この「遼丸」を買い取って、釣り船をビジネスにする計画をしているというから、

「岡山からついてきた奥さんも賛成しておいでですか」と訊けば、

「もう、あきらめておりますよ」とのことだ。


船は東なのか、南なのか、とにかく2時間ほど航行する。

途中で日の出を見た。

もう沖縄の島影も見えなくなった。

波が荒くなる。

「1.5から2メートルくらいの波が予想される」と船長。

「波の大きさは、波の一番高いところと、一番低いところの高低差をいいます」とタノウエ解説。


漁場で停船する。

「沖縄の海は深いです。このあたりで水深1000メートルもあります」

へ~え、1000メートルか。

「漁協がこしらえた魚礁があるんですが、それはロープを沈めたもので、それにプランクトンが

あつまり、それをエサにする小魚があつまり、小魚をねらうマグロやカツオがあつまるという

仕掛けです」

前回息子のジュンが来たときには、海は鏡のように穏やかだったそうで、なんとマグロを

25数匹も釣り上げた。それに味をしめたものだから、われわれがやってくる機会に

その大漁を再現して見せようとの、本日の計画だったのだ。

ところが、海は荒れるし、魚はさっぱり釣れない。

数時間を経過した頃、ようやくナリタケさんとタノウエさんがチビキとカンパチを釣り上げた。

ますます波は大きくなる。

「島の見える漁場にもどることにします」と船長が判断する。

二時間ほどの航行に移るが、船は揺れに揺れる。

船首、船腹にぶつかる大波が、われわれの全身をぬらす。

機関室から黒煙があがった。

船長が「マフラーが破損して、煙がでてきたぞ」とタノウエさんと会話している。

木の葉のように揺れる船、大波、全身に降りかかる波しぶき、不安なエンジン音と

黒煙。

わくわく亭は船が転覆しないかと、そればかり考えている。

転覆したら、この船長以下7名のうち、だれが助かるだろうか、などとみんなの顔を見るのである。

船長以外は、みんな居眠りをする。

わくわく亭も、なんどもうたた寝をした。

「船酔いです。船に酔うと、かならずしも嘔吐するとはかぎりません。眠くなるのも

船酔いの症状です」とタノウエ解説である。

船が停まる。

エンジンが弱々しい音になる。どうなった?

見れば、東村の漁港を出たときに見えていた岬の姿がはっきり見える。

波もかなり穏やかである。あ~、よかった。

さて、倅のジュンが釣り上げた。カンパチ、カツオを釣る。

ナリタケ、タノウエさんたちも、チビキ、カンパチを釣り上げる。

わくわく亭もサオを持たされた。

女房もサオをにぎり、リールを巻いている。

倅のダイスケが、ついに釣り上げた。ツムブリである。

女房のサオにも手応えが?しかし、それはイトがプロペラにからんだのであった。

とうとう、わくわく亭夫婦は釣果なし。


岬に日没を見ながら、港に戻った。日の出から、日の入りまで洋上で過ごしたことになる。

わくわく亭としては、こんな経験はじめてであり、船が転覆しなくてよかったよ。

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夕食は本島を横断して、東シナ海側の名護湾を望む「琉球料理 名護曲レストラン」で

沖縄家庭料理を食べた。われわれ4人にナリタケさんが加わった。

ナリタケさんは横浜から沖縄にやってきて、十数年になると言う。東大を卒業して、エリート

として仕事をしていたらしいが、考えるところというか、事情があって沖縄に移住した。

43歳で、ガールフレンドはあるが結婚はしていないそうだ。

学習塾をはじめたのが成功して、250人の生徒を指導している。


わくわく亭の倅ジュンにしてもそうであるが、大都市を離れて、亜熱帯の海に囲まれた自然環境と

あたたかな人情のある沖縄での生活を選択する若者がたくさんいるのである。

ジュンは24歳で沖縄に移り住み、いま37歳である。

彼は海のあるところで暮らしたいと、冬でもサーフィンのできる、沖縄に来て、

仕事をみつけ、アキナという島の娘と結ばれて、双子の女の子の父親となった。

沖縄のフトコロの深さを、おもうのである。