晴好雨奇

 NHKの気象予報士のおじさんが、「今日の一言」で気の利いたことを言うことがあったと、書いて
雀が桜の花の蜜を吸うことを紹介しましたが、もうひとつ、彼が話した「雨奇晴好」という言葉も紹介しておきます。

 「4月のころ、降っても晴れても景色がすばらしいことで、おぼろ月夜や雨にけむる新緑もよいものです。それを雨奇晴好の季節といいます」

 いい言葉だな。出典はどこだろうか。僕は広辞苑をひらいてみました。蘇東坡の七絶の詩でした。晴好
雨奇、といっても意味はかわりません。詩の題は「湖上に飲し、初め晴れ、後雨の詩」といい、西湖の美しい情景を讃えた詩です。
 
       水光瀲艶(れんえん)として晴れて方(まさ)に好く
       山水空濛(くうもう)として雨も亦た奇なり
       西湖を把(も)って西子に比せんと欲すれば
       淡粧濃抹総て相ひ宜し

 水面のさざ波の上にしきりに動く光の美しさは、晴れてまさにすばらしく、霧雨に煙った山々を見れば
 雨もまた趣がある。美女西施が濃い化粧のときも、淡い化粧のときもすべてよかったように、西湖は
 晴れても雨でも趣があってまことによろしい。

 4月から5月の初夏の季節、まさに今日この頃、ちょっと気取って、「晴好雨奇」の候、とあいさつに
つかってみたい言葉ではありませんか。