中国新聞の書評
わくわく亭の『尾道物語・姉妹篇 十八歳の旅日記』を「郷土の本」の欄で紹介してくれた。
写真では鮮明でないので、下のように書き写す。
青春の痛み 3編収録 尾道商業高OBで、青春時代をすごした尾道市を舞台にした 作品が多い森岡久元さんが、10冊目の作品集「十八歳の旅日記」を刊行した。 18歳前後の少年を主人公にしながら異なるスタイルで書き分けた3編を収録する。 表題作「十八歳の旅日記」は江戸期の詩人・思想家頼山陽が残した日記 「東遊漫録」を読み解きながら、当時山陽が抱えていたはずの心の屈折を あぶり出していく。18歳の春に竹原、尾道で過ごした2日間を軸に、 「書かれていない事実」をミステリー仕立てで明らかにしていく語り口が鮮やかだ。 親の期待という重圧に起因する心の病、世代間断絶、病としての性依存。 「それら、小さな家庭の中の苦しみはいつの時代にも普通にあるもの」と森岡さん。 美少女との恋を通し、少年の自意識と自信喪失が交錯する「ストローハットの夏」、 性のトラウマを抱える姉に寄り添う弟を描く「ペリット」。 全3編に通底するのは、普通の日常に潜む特別の青春の傷みだ。 古希を迎える作者が、現代の若者言葉も巧みに操り、みずみずしく描写している。