杉浦日向子アルバム(3)

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杉浦日向子さんのアルバムを続けよう。

雑誌取材で撮った彼女の仕事場でのスナップ。

ちょっと照れた表情とポーズ。



マンガ家の仕事場というよりか、若い時代考証家の書斎といった背景である。

書棚にあるのは江戸時代の研究書や文献ばかりで、マンガ本は見あたらない。

彼女が目指していた方向が、マンガ作家としてとどまるのではなく、まだその先に

江戸文化研究家としての展望があったろうと、蔵書を見て感じられる。

中に、ひときわ場違い(?)な装置が見える。

ステレオスピーカーとアンプである。

少女の頃から兄の影響で世界のロック音楽を聴いていた。

兄雅也さんの文章から引用:

「『ガロ』などにマンガを連載していた頃は同じマンションの二階に個々に家を買って、

家族で三室を行き来していました。彼女の仕事場からは、いつもロック音楽が流れていました。


多かったようです」

わくわく亭が知らないロック・グループばかりだが、

和服を着て、「お江戸でござる」に出演して、江戸人になりきっていた彼女の

意外な素顔の一面である。

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イラストは『ガロ』時代に一緒に売り出していた女性マンガ家の近藤ようこさんによる。

「ふだんはスッピン、少女っぽい感じ」「とてもナデ肩」とコメントをつけている。

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イラストレーターの林丈二さんの証言。

「テレビに出た後はエネルギーを使い果たしてぐったりです、と言っていたが、たしかに

体力はあまりなかった。

それは、彼女の偏食が関係していたと思う。肉はだめで、カツ丼などは食べたことが

ないという。食べるといえば、蕎麦とクリームパン。

日向子さんは、どこかのお城のお姫様というようなイメージがある。

お城の中で育って、想像力ばかりが先行して、ナマには弱い」

「無類の銭湯好きで、近所の銭湯をかたっぱしからまわって、楽しんでいた。

これはもう、江戸の下町のちゃきちゃき娘そのもの。

江戸の将軍が、変身して江戸の町で活躍するという、その女性版のようでもある」

食べるものは蕎麦とクリームパンというのはユニークだ。

彼女は血液に免疫系の持病を病んでいたそうだから、

体力がなくて疲れやすい体質になっていたのだろう。

カツ丼などの油で揚げたものがにがてだったのも、その影響があったのではないか。

1993年、杉浦日向子さんは『体力的に無理が利かないのでマンガ家を引退する』と

宣言して、以後は「隠居生活」と称していたが、そのとき、まだ35歳の若さだった。

かわいそうに。

結婚生活が短かったのも持病が原因だったのではないか。




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杉浦さんをかこんで蕎麦好きがつくっていた「ソバ好き連」(ソ連)たちの証言から。


K:若い頃なんて細くて色が白くて本当に妖精みたいでしたよね。

H:日向子さんはニンニクとかそういう臭い野菜はそもそもダメだった。

F:あのときは、日向子さん、窓を開けてネギの臭いを懸命に外に出していましたね。

  「苦しい…」みたいな感じで。

K:油もダメだった。

  とんかつとか天ぷらとかはほとんど食べたことがないんじゃないかな。

  天ぷらってソバには付きものだけど、食べなかったね。

H:日向子さんが形成される上で大事なのは、やっぱりおじいちゃんなんだね。

S:おじいちゃんは一升二升平気で呑んでたって言ってたじゃない。物凄い大酒飲みで。

H:なるほど、それは日向子さん、おじいちゃんの血を確実に引いていますね。(笑)


ははは、杉浦日向子さんの「偏食」がわかって、おもしろい。



                  ☆つづく☆