「この空恐ろしいまでの現実」(2)
雑誌「SAPIO」の「この空恐ろしいまでの現実を直視せよ」から、もうすこし紹介する。
政府は目下、高校教育の無償化法案の国会通過をめざしている。
高校進学率はおよそ95%で、ほとんどの子が進学する日本は、世界一である。
だから、ほとんど義務教育とかわらない状況なので、教育の機会均等と家計負担を考慮して
無償化をしようという政府方針で、それは間違っていないと思う。
しかし、
教育内容はしっかりやらなければ、またしても予算バラマキに終わりかねない。
というのは、いまや教育機関なのか?、と疑わしくなるほど低レベルの大学が
山ほどあるのを見るにつけ、大学生を送り込む高校の教育レベルが疑われるからなのだ。
そうした低レベルの高校が無償化によって、さらに教育内容がレベルダウンしないかと。
2009年の大学進学率は50.2%で、世界最高水準である。それはいいことだ。
それをうけいれるために、大学数は758校まで増えている。
しかし、少子化傾向がすすんで、募集定員の学生があつまらない大学がでてきた。
中、校、大学まで一貫教育というキャッチフレーズで、学生を囲い込む有名伝統校
の作戦の煽りをうけて、歴史の新しい大学は、もはや事実上無試験で入学を認める事態に
なっている。
なぜなら、定員割れが続けば,国からの補助金がストップして経営が危うくなるからである。
そこで、どんな学生でも受け入れざるをえない。
①入試の答案用紙に名前を記入すれば合格にする。
②それでも、そもそも入試に学生が来てくれない大学があるわけで、やたら流行っているのが
「オープンキャンパス」といって、受験生に大学を事前に見学してもらう宣伝方法。
そして、「オープンキャンパス」に来た学生には、交通費、宿泊費を支給、おまけに
受験成績にポイントをつける。スーパー、コンビニのポイント制なみか?
③それで驚いてはいけない。
「オープンキャンパス」に来た学生には、その場で合格票が渡される大学もでてきた。
入試も面接もナシで。
もちろん、これらは底辺水準の大学だろう。
しかし、日本の大学教育の環境は、入居者が減った住宅団地のようなもので、空き部屋のままに
するよりか、安くして入れやすくする。
ますます学生に甘くなり、迎合する傾向になる。
それはすなわち、高校の教育レベルにも反映することになる。
そして、無償化となる。
小中の初等教育が学級崩壊している上に、子供たちは100%高校へ進み、
いづれ60~70%が大学へすすむ。
そして、大学で、中学生レベルの国語、英語、算数の教育を受けることに?
いや、冗談ではなくて、「SAPIO」によれば、いままさにそのレベルだという。
「関西のある大学工学部では、理科系学科にもかかわらず四則計算が出来ない学生が入ってきた。
計算式の中では掛け算・割り算やカッコ内を優先するということを知らない。
教員は困った末に“百ます計算”をさせたところ,学生は計算の面白さに気づいた……」
大学に行きながら、「いじめ」が問題になっているそうだ。
「勉強ができない」とか「ファッションが変だ」とかで仲間はずれにして
「いじめ」られたり、私物を隠されたり、シカトされたり。
学内の相談所に悩みを打ち明けにくるという。
まるっきり、小学校の保健室の風景とおなじなのだ。
やがて、登校できなくなる?
学生ばかりは責められない。
大学は友達をつくったり、サークルに入ったり、教員と楽しく遊んで、「大学に行くのが
楽しい」と思われる場所をめざしている、という。
学問の府としての自覚はどこへすっとんで行ったのか。
◆写真の人物の名前を書かせるテスト
これは誤答で、バツになっている。
つぎは○になっているが、これでも○には違いないか。