日本の生活保護受給者は多いのか?

原田泰著『日本はなぜ貧しい人が多いのか』を紹介したが、

その中に「日本の生活保護制度はどこが変なのか」という項目がある。

丁度新聞各紙が昨年12月時点での生活保護受給者が過去最高を更新したという厚労省

発表を報じている。

読売新聞の記事を引用する。

生活保護受給者、180万人を突破(2010年3月4日)

 全国で生活保護を受けている人が昨年12月時点で181万1335人(速報値)となり、

前月比で2万682人増、前年同期比では20万4632人増だったことが4日、

厚生労働省のまとめでわかった。

 長引く不況の影響で、生活保護を受ける人が増え続けており、受給世帯数も

130万7445世帯と20か月連続で過去最高を更新している。また、2008年度の

生活保護費の不正受給は1万8623件で、不正受給額は前年度比約16%増の約106億円。

稼働収入の無申告や過少申告が約7割を占めた。



このところ生活保護受給者をめぐるニュースをかなり目にするようになった。

年越し派遣村」にあつまった失業者にボランティアが住居の世話をして、生活保護受給の

申請を手伝ったというニュース。

生活保護受給者を食い物にしている「貧困ビジネス」の実態報道。

都内で生活保護受給をしている高齢者たちを受け入れていた群馬県渋川市たまゆら」が

火災で10名が焼死した事件。


こうした事件報道や受給者数急増のニュースを見るにつけ、日本の生活保護という最後の

セーフティネットは、他の主要国と比較して、充実しているのか、多いのか少ないのか

知りたいところである。


(1)180万人は多いか少ないか

上掲の新聞記事によれば、昨年の12月時点で生活保護受給者は181万人である。

原田泰さんの本から、OECD加盟先進国と比較してみる。

1999年の資料なのであるが、公的扶助を受けている人々の、総人口に占める比率は

OECD諸国平均が7.4%だったのに対して、日本は0.7%と低かった。

昨年はOECD諸国も金融危機のために公的扶助を受けている人の比率は、かつてないほどに

高くなっているだろうと思われる。7.4%をはるかに超えているだろう。

日本は181万人となっているから、総人口1億3000万で割ってみると、1.4%となる。

まだ欧米先進国に比べて、はるかに低い公的扶助率である。

OECD諸国並みの7.4%になると、962万人である。

受給者ははるかに少ないということだ。



(2)受給額の総額は多いか少ないか

国内総生産(GDP)に占める公的扶助の割合をみると、

OECD諸国平均が2.4%であるのに対して、日本は0.3%の支出である。

もっと出せるのかもしれない。


(3)一人当たりの公的扶助手当の水準

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現役の勤労者世帯の平均所得比、という図表である。

世帯平均所得が平成19年には556万円であるから、その54%が支給される、となると

年間で300万、一ヶ月に25万円となる。

これはOECD諸国の中でも7位であり、水準は高い。

イギリス、フランス、ドイツより、はるかに高水準である。


では、この3つの指標から、なにが分かるのだろうか。

「要するに、日本の一人当たりの公的扶助給付額は主要先進国の中で際だって高いが、

 公的扶助が実際に与えられている人は少ないということになる」と分析される。

日本は、法的に硬直した制度を維持する国だから、国民の所得水準の変動に

柔軟に合わせることなく、

1.高い水準のままで、実際の支給要件を厳しくして

2.保護を受ける人に比率を下げてきた。

3.その方が給付総額が減るという財政的要請があるからだろう。

 
これでは、給付を必要とする人に届きにくくなってしまう。

原田氏は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカのように給付水準を引き下げて、

生活保護を受ける人の比率を高くするべきだ、と結論する。

それには、わくわく亭は大賛成である。

イギリスの水準として、43%であれば、上の計算では、年間給付240万、月に20万円となる。

そして、受給者比率をイギリス並に上げればいいだろう。


この意見に、民主党政権は真剣に耳を傾けて欲しい。