日本はなぜ貧しい人が多いのか

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大和総研チーフエコノミスト原田泰さんの『日本はなぜ貧しい人が多いのか』

新潮選書 \1,200-

何故だろう?

本のタイトルにひかれて買って読んだ。

バブルの頃、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といってアメリカについで世界で第二位の

個人所得がある国だったはずが、昨今は世界で20~30番に堕ち、それどころか、

政府の発表では、相対的貧困率アメリカについで第二位になったではないか。

なぜ20年の間に日本人は急に貧しくなったのだろうか。

そんなことを考えていたから、このタイトルにひかれたのである。


・日本の地方にはなぜ豪邸街がないのか

給食費を払わないほど日本人のモラルは低下しているのか

・日本の生活保護制度はどこが変なのか

・日本はなぜ貧しい人が多いのか


などなど興味のある60数項目について、統計的な数字を表示しながら、

分析、解説をしたビジネス書である。

明快な解答を図表をもって示しているから、納得させられる。

その中から、表題になった「なぜ貧しい人が多いか」について、原田さんの解析を紹介しよう。


まずはじめに、相対的貧困という用語ですが、絶対的貧困とは区別されます。

アジアやアフリカに饑餓に苦しむ生存の危機に瀕した貧困の国はたくさんあります。

そうした貧困と比べているのではないのです。

一つの国の中で、所得が低い人から高い人を並べて、ちょうど真ん中にある人の所得の

半分以下の所得しかない人が占める比率を「相対的貧困率」と言うのです。

日本人のほとんどが中流以上の生活をしていると感じていたころは、この貧困率は低かった。

バブル時代に所得は上がるし、不動産も株式も上がっていた時代には、この貧困率は低かった。

バブル崩壊後から不況とデフレが十数年つづいて、国民に大きな所得格差がつくようになって、

この相対的貧困率は高くなったのです。

つまり、豊かな人と、貧しい人の両極に国民は分断されて、中間層が激減してきたのです。

アメリカ的な構造になってきたと言える。


ここに、先進主要14ヶ国の相対的貧困率をしらべたOECDの資料がある。

1)は1990年代央のもの。日本ではバブル崩壊時期に当たります。

2)は2000年のものです。

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図表の見方ですが、棒グラフの高い国ほど相対的貧困率が高いのです。

1990年代央では、日本は14ヶ国中、一番低くなっています。貧富の格差が低い国でした。

しかし、棒グラフの色が濃い部分と、薄い部分があって、濃い部分が肝心の「可処分所得」です。

フランスなどは貧困率はダントツに高いですが、色の薄い部分(児童手当、失業給付、生活保護

など社会保障による援助)が充実しているので、可処分所得での格差は日本の半分くらいです。

1990年代央でも、実質として日本はアメリカ、イタリアについで3番目に

相対的貧困率は高い国でした。

2000年になると、アメリカについで第二位になり、それもほとんど同じくらいに

接近しています。

色の薄い部分が小さいことが原因です。

それは、社会保障が貧弱だと言うことになります。

派遣社員が契約打ち切りになると、すぐに路上生活者になってしまうのは、

14ヶ国の内、アメリカと日本だけだと言うことになります。

それだけ、日本は国民に冷たい政策をとってきたのです。

日本は明治以来、ドイツ、イギリス、フランスを目標にして国造りをしてきました。

戦後はアメリカをモデルに変えてやってきました。

しかしアメリカは、もはやモデルにならなくなりました。

国民皆保険すら実現できない国なのです。

これからは、社会保障というセーフティーネットを充実させた

ドイツ、フランス、イギリスをもう一度、明治維新当時にもどって、その

国造りを参考にして、相対的貧困率の低い国をめざして行くしかないでしょう。