俵万智さんの詩

イメージ 1


わくわく亭の本はすべて「澪標」からの発行です。

代表の松村信人さんが大学の後輩である気安さから、なんのかのと、無理を言いながら、

9冊も出版してもらった。

「いつか大化けして、ベストセラーになり、映画化されて、在庫一掃。いい夢を見よう」

などといいながら、彼を本の在庫の山に埋もれさせている。


そんな話は、いまは忘れよう。(←身勝手)


澪標がつぎつぎと、新感覚の詩の雑誌を発行している。

その活動をブログで紹介しておきたい。

松村信人さんは、本来が詩人なのです。『光受くる日に』などの詩集がある。


この現代詩の読者が少なくなり、詩集も詩の雑誌が売れない時代に、

二つの雑誌を発行している。

「イリプス」と「びーぐる・詩の海へ」という季刊誌。

さらに近く「火の鳥」という詩の雑誌を、みずから編集長になって発行するという。

季刊誌を3つ発行するということは、どれか毎月発行されている計算で、

時間にしろ、費用にしろ、「ほんま、ようやるな~」であります。

「関西から全国に、現代詩が不死鳥=火の鳥であるというメッセージを発信したい」という

熱い使命感を抱いている人である。


どさっと、両誌の既刊号が送られてきたのを、めくってみると、

いや、とても充実した内容なのである。

「売れて欲しい」と、どこかにお願いしたくなるような、詩の雑誌です。

「びーぐる」5号は、2009年秋号で、特集が「谷川俊太郎と〈こども〉の詩」。


その〈こども〉の詩の中に、短歌集「サラダ記念日」の俵万智さんの寄稿した詩が載っている。

短歌集やエッセイ集はたくさん出版されているが、彼女の詩は見たことがなかったので、

新鮮だった。

俵さんはシングルマザーであることは週刊誌などで知っているが、

彼女の子供との情景がうたわれた詩と受け取って、あたたかい気持ちになった。

それを紹介してみたい。


              ぼくには、おとうさんがいない
 
 ぼくには、おとうさんがいない。

 「どうしていないの?」って、おかあさんにきいた。  
       
 「それはねえ、けっこんしなかったからだよ」って、おかあさんはいった。

 けっこんして、おとうさんとおかあさんとふたりで、こどもをそだてようってきめるひと

 もいるし、おかあさんみたいに、けっこんしないで、ひとりでそだてようってきめるひと

 も、いるんだよ。

 「ひとりじゃないでしょ」って、ぼくがいったら、おかあさん、ちょっとびっくりして、

 それから、ふにゃってわらった。

 「そうだね。じいじとばあばとえっちゃんとばあばあちゃんとおじおじちゃんとたいちと

 ためちゃんと……いっぱいいっぱい、いるねえ」

 いっぱいいっぱいいるけど、おとうさんはいない。

 「いたほうが、よかったかな?」って、おかあさんは、きいた。

 それは、よくわからない。でも、うらやましいっておもうこころが、いやなの。

 そういったら、おかあさんは、だまってしまった。それから、ぎゅってぼくをだきしめた。

 おかあさん、じいじとけっこんして。