魚屋さんのセキレイ

 セキレイは、だいたい水辺にいる野鳥ですが、最近は住宅地でもごくふつうに見かけます。

羽の色は白と黒で、長い尾が特徴。スズメ目に分類される小鳥ですが、長い尾の部分だけスズメより大きいかんじで、その尾を上下に振る習性があります。チチッ、チチッと鳴きます。

 昨晩のテレビニュースで見たのですが、しばらく駐車したままにしてあった車のスペアタイアの中に、セキレイが巣をつくり卵を産みつけていました。卵は5,6こありました。車の持ち主は、卵がヒナにかえるまでは車は移動させないと語っていましたよ。

 セキレイは僕が散歩する白子川の付近でもたびたび見かける鳥ですが、家の近くの商店街にある魚屋さんの店先に、一羽のセキレイがいるのです。

冬の季節はさすがに現れませんが、春から秋にかけて、きっとおなじセキレイなのでしょう、快晴の午後などに通りかかると、店先をせわしげに歩き回っているのです。

裏通りなので表通りより人通りは少ないとはいえ、買い物客もくれば、車も通過します。そうした邪魔がはいると、さっと店の軒か日よけの上に飛び退いてやりすごし、また店頭で輪をかいたり、じぐざぐに歩行したりと、せわしげです。

魚屋には「さあ、いらっしゃい。いらしゃい」と呼び込みをするおかみさんもいれば、鮮魚をさばいたり、魚を焼いたりする店主がいますが、まるでセキレイを気にしていません。

 毎日のことなので、人も鳥もあいてに慣れっこになっているのです。

 きっと、さばいた魚の頭やアラを、ときどき投げてもらうのでしょう。

 それにしても、まるでその魚屋さんの放し飼いにしているセキレイみたいです。正面には肉屋があり、くだもの屋があっても、ほかのどの店先にもセキレイは近寄ろうとはしません。

 だから、僕はその小鳥を、「魚屋さんのセキレイ」と呼んでいます。