『貧困大国アメリカⅡ』

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早いもので「アメリカ帝国の終焉か?」という記事で『貧困大国アメリカ』という

堤未果さんのルポ(岩波新書)を紹介して一年経った。2009年1月4日の記事だ。

その新書は岩波では久々の大ヒットとなって、十数万部売れているそうで、

おそらく、それ行け~、ってんでパート2を書かせたのだろうが、

これがパート1に見劣りしない充実した内容で、読み応えがあった。



第1章では、サブプライム住宅ローンに匹敵するくらい重大な問題になっている

学資ローンの問題。学資ローンで大学卒業生が経済的に押しつぶされつつある実態をルポ。


第2章ではGM退職者をはじめとして、年金が半額に減額されて、貧困層に転落していく

退職者たちの絶望的な実態を。

そして第3章では、いまオバマ大統領が上下両院で通そうと必死になっている

医療保険制度。内容は後退に次ぐ後退で、もはや理想からはるかかなたに遠ざかり

形骸ばかりとなった法案。それさえ上院での可決は難しい。

なぜ、アメリカでは国民皆保険が実現できないのか。

民間の保険会社が医療機関と国民の間に入って、利益を吸い上げている構造的な問題。

ああ、アメリカの不幸と、オバマをもってしても改革ができない強欲資本主義が

学資ローンでも医療保険制度でもはびこっている絶望的な社会構造。


日本は、そのアメリカの制度を真似しようと小泉政権では、高齢者医療保険制度を

変えようとして失敗したが、失敗してくれてよかった。

年金制度もぼろぼろではあるが、アメリカとくらべれば、はるかにマシである。

アメリカに学ぶのは、国がやるべき仕事を、強欲な資本主義の民間に丸投げしては

ならないという重い教訓である。


エピローグで、オハイオ州選出の民主党下院議員の発言が紹介されているが、

まさにアメリカが「貧困大国」である苦境を吐露している。

『国内には4200万人の饑餓人口と、4700万人の無保険者がいる。

 1500万人が職にあぶれ、1000万人が家を差し押さえられそうになっている。

 財界へ流れた分と戦争予算のしわ寄せを受けて拡大する国内の貧困と

 失業者こそが、大量破壊兵器ではないか』と。


もはや、1960年代の、あの夢のようなアメリカは存在しない。