いつも一人で赤トンボ

昨夜のNHK9時のニュース番組で「特殊清掃業」という事業の紹介があった。

いま孤独死が急増している。

団地のような集合住宅で、一人で暮らす住人の孤独死が発見されると、

自治体や死者の遺族からの依頼を受けて、死者が住んでいた部屋の清掃をする仕事が

「特殊清掃業」なのである。

全国に30社ほどがすでにあるそうだ。

ある関東地区の業者の場合、年間に300件ほどの依頼があるという。

大多数は一人暮らしの高齢者であるが、病気で人知れず亡くなって発見される50~60代の

孤独死もある。

公団住宅の調べによると、公団の住宅だけで年間に613人が孤独死している。

ここ何年かで、その数は3倍に上っている。高齢化がすすんでいるためだ。



紹介された「特殊清掃業者」とともにカメラが入ったケース。

川崎市の集合住宅で、91歳の女性が亡くなった。

10年前までは妹と同居していたそうがだ、妹が病死してから一人になった。

生活保護をうけながら生きていた。

部屋はゴミであふれていた。

電気トースターの中には、食パンが入ったままだった。

椅子の背に、セロテープではりつけた紙片には、彼女が書いたと思われる句のようなものが

走り書きしたあった。

《いつも一人で赤トンボ》

91歳とも思えぬ、しっかりした文字だった。


業者は、まだ健康にくらしている高齢者の部屋の清掃も引き受けている。

そして、独居者には、「最後の伝言板」というステッカーを配る。

それを、冷蔵庫など目につきやすい場所に貼って貰うのである。

伝言板には、自分が死去したあとで、どこの誰に連絡すべきか、名前、住所、電話番号

などを書き込むのである。

孤独死をした場合、他人の手をわずらわすことになるので、せめてのことに

それだけは書き残して置こうというのである。


日本は、こんなにも、さびしい社会になったのか。