それでも日本人は「戦争」を選んだ

イメージ 1


20世紀は戦争の世紀だったといわれる。

たくさんの戦争、紛争の中には、二度の世界大戦がふくまれている。

そのどちらにも日本は参戦し、戦争当事国となっている。

太平洋戦争の終戦から64年が経ったのだが、いまだに多くの日本人は、なぜあれほどに

国力に大差があった米・英両国を相手に戦争をはじめたのだろうか、という疑問を抱いている。

「やむにやまれぬ」状況があった、とか「戦争するように米・英国に誘導された」とか

さまざまな意見が交錯したまま、わたしたちは次々と戦争について書かれた本を読んできたけれど、

読めば読むほど混乱してしまい、「なぜ戦争をはじめたのか」という疑問への満足のいく解答

は得られなかった。


加藤陽子さんの『それでも日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)は、そうした積年の疑問に

冷静に、平明に、いまの高校生たちと対話をしながら、内外で公開された最新の関係史料などを

を分析した上で、解答を与えてくれる好著であります。

加藤さんは東京大学大学院人文社会系研究科教授です。

表紙の下側に印刷された「惹句」がありますが、これにわくわく亭は惹かれたのです。

『普通のよき日本人が、世界最高の頭能たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?

 高校生に語る――日本近現代史の最前線』

日本が経験した戦争、日清戦争日露戦争第一次世界大戦満州事変と日中戦争

そして太平洋戦争。該博な知識と最新の資料分析をもとに、高校生たちに質問をし、

かれらからの回答をさらに考察するという授業形式の論考は読みやすく、具体的で面白い。


上にも書いたことですが、いくつも戦争史を読みながら、のどの乾きがいえなくて水の

はいったグラスに、つぎつぎと手をのばすわたしたちの事情を、著者はつぎのように

後書きで分析してくれています。


『(そのように)本を読み一時的に溜飲を下げても、結局のところ「あの戦争は

 なんだったのか」式の本に手を伸ばし続けることになりそうです。なぜそうなるかといえば、

 一つには、そうのような本では戦争の実態を抉る「問い」が適切に設定されていないからであり、

 二つには、そのような本では史料とその史料が含む潜在的な情報すべてに対する公平な

 解釈がなされていないからです。

 これでは、過去の戦争を理解しえたという本当の充足感やカタルシスが結局のところ

 得られないので、同じような本を何度も読むことになるのです』


ではこの本から、「本当の充足感やカタルシス」を得られたでしょうか。

かなりの高得点で充足感、カタルシスを得られました。

すくなくとも、定価の1700円は納得の値段でした。


日本人はなぜ日清戦争以来、太平洋戦争での敗戦まで戦争を「選んで」きたのか、

その疑問に答えてくれる本をおさがしの方には、おすすめの好著です。