狐者異と書いて「こわい」と読ませる。
人間の高慢強情のことだという。
生きているうちは法を無視して人のものを取り食らい、死んだ後は
妄念執着の思いを引いて、さまざまな形になって世の妨げをなす、という。
要するに、死んだ人間の妄念執念が形となった幽霊のことであろう。
《世に恐ろしいことを「こわい」と云うのは、ここから出た詞である。》
と『絵本百物語』の筆者はいうが、「こわい」に宛字をして
こじつけた語呂であろう。
夜なきうどんを食べていて、こんな奴が現れ出でたら、だれしも「こわい」とさけぶ。
だから、「こわい」か。