近藤聡乃(こんどう あきの)

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まだ2冊の単行本があるだけという、若いマンガ作家です。

1980年千葉県の生まれで、多摩美術大学グラフィックデザイン学科の卒業。

「ガロ」から独立して創立された青林工藝舎からデビューした、注目に作家である。

事実上廃刊となった「ガロ」に代わる雑誌が「アックス」であるが、その

第2回(2000年)アックス新人賞・奨励賞を受賞した作品が「小林加代子」

というユニークなマンガ。

ストーリーマンガではない。

作者が見た夢や少女時代の記憶などをもとに織り上げた幻想的な画像世界といえる作品なのである。

以後発表された作品のほとんどすべてが、そうした幻想的な短編であり、彼女の

作品の性格は処女作である「小林加代子」のよって決定されたといって過言ではなさそうである。


『はこにわ虫』(2004)に「小林加代子」は収められている。

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画像は「小林加代子」の一場面であるが、左に文章がみえる。

手書きのていねいな文字であるが、彼女のマンガに挿入される文字は、吹き出しも含めて

すべてが手書き文字であり、活字を使っていない。

文字のイメージもまた、画像に一部として描いていると思われる。

つぎに、『はこにわ虫』に収められた「虫時計」と「てんとう虫のおとむらい」から

扉絵を紹介する。

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彼女のマンガの性格をよく物語っている。

作者はいわばグラフィックデザインとして、それぞれのコマを、ページを描いている。

したがって、マンガにも使ったイメージを拡大してグラフィックアートとして

発表しているのも頷ける。国内、海外で頻繁にギャラリーに出展している。

また、その作品の性格から、アニメーションへの関心に発展する。

2002年に「電車かもしれない」というアニメを制作してNHKの

動画紹介番組であるデジタルスタジアムでは、アニメーション部門年間グランプリを獲得している。

動画投稿サイトで、わくわく亭は見たが、

彼女のマンガ作品はどれにしても、アニメと親和性がある、と感じた。

アメリカやヨーロッパの映画祭が、短編のアニメーションを表彰するが、

ストーリー性よりも、映像表現としての芸術性を評価する。

日本のテレビにあふれるアニメとは異なる、ときにはアバンギャルドというか前衛的な

グラフィックアートであるが、近藤聡乃さんの世界はそうしたアニメ世界に通じているようだ。

               ーつづくー