「作家」で生活できる国になれるでしょうか?

作家で生活することは、いつの時代も容易ではなかった。

純文学系の作家で、文筆だけで生活が成り立つ作家はわずかしかいないといわれる。

芥川賞受賞作家にしても状況はきびしい。受賞後2年間は文芸誌に原稿を書かせてもらえて、

それを単行本にして1~2冊は刊行してもらえるが、その先は不透明。

受賞後2年間だけは生活保障してもらえるが、その先は本が売れなければ、

生活の糧は自分で見つける必要がある。

純文学系の月刊文芸誌としては「新潮」「群像」「文学界」「文藝」などがあるが、

それぞれ数千部しか売れていないから、文芸出版社にとっては大赤字で、

作家にしても、ここに1年に数編の作品を発表するだけでは、生活は成り立たない。

作品を書きたくても、発表舞台に比して、作家数が多すぎる状況にあるから、

執筆依頼もなかなか順番が回ってこない。

執筆だけで生活できる純文学作家が少ないわけである。

そこで、副業として、大学の教員になる人が多い。

しかし所詮は臨時講師クラスであるから、教員報酬としても、いいところ月収20万程度。

作家はいつの時代も経済的に楽はできない。



以上の予備知識をもって、今日の朝日新聞に載っている、文芸評論家の斉藤美奈子

文芸時評を読むと、面白い。


ユニークな文芸評論を書いて人気の斉藤美奈子さんで、好きなのだが、

今月の時評のマクラは「群像」のコラムの紹介だった。

コラムの題は「文芸民主党 結党宣言」である。

ここに孫引きさせてもらう。

 文芸民主党は、「作家の生活が第一」と考えます。

 その新しい優先順位に基づいて、すべての予算を組み替え、文芸振興に

 集中的に税金を使います。


 文筆生活の安定をはかり、大学教員にならなくても、創作に専念できる

 希望ある未来を作り上げます。


 みんなを苦しめる単行本の初版部数低下を食い止め、

 文庫本の絶版を減らします。

文芸書は初版しか刷られないのが、いまや常識。

「たちまち、増刷」「たちまち重刷」などと新聞広告される本は、エンターテーメント系

ばかりで、純文学は初版止まりで、重刷はまずない。

初版部数も1万とはいかず、数千部があたりまえ。(しかも返本率が高い)

文庫になっても、おびただしい新作が毎月発行されるから、すぐに廃刊になってしまう。


そうした文芸出版界の苦境を、「群像」編集者は、お笑い系コラムにしてみたのである。

「群像」は日本で最大手の出版社である講談社が出している雑誌。

選挙後のギャグとして書かれたものではあるが、文芸誌編集者と作家達の置かれた

生活環境のきびしさは、笑ってばかりはいられないのであります。

若者が作家になるなら、エンタメ、ミステリー作家を目指すべきである。(苦笑)