20世紀少年(2)

 浦沢直樹の「20世紀少年」について、もう少し書くとしよう。

 作者は1960年の東京生まれ。

 大阪万国博覧会開催の1970年には10歳で、小学校4年生のころだ。そのころの少年たちの感性を
みずみずしく描写して感動させる。

 万博に行けた子供、行けなかった子供、行けなかったのに行ったと嘘をつく子供。どの子にとっても素直に科学の進歩を信じた、夢と希望に満ちた近未来が大阪万博だった。
 少年たちは原っぱに、かれらだけの秘密の小屋を雑草でこしらえて、そこを秘密基地と呼んでいた。

 小屋に集まっては、未来世界を空想しあう。邪悪なものが2000年の大みそかに巨大ロボットを東京に出現させ殺人ウイルスをまきちらし、NY,ロンドン、などでもウイルスが散布されて、人類が滅亡の危機に陥る。と、そんなものがたりをノートに書いて遊んでいた。

 ところが、正体不明の「ともだち」と名乗る覆面やマスクをした人物が、2000年の12月31日に実際に人類世界絶滅のウイルス散布をはじめた。

 その人物は誰か。

 どうも、少年たちが秘密基地でノートに書いていた空想ものがたりのシナリオ通りに実行しているらしい。

 少年たちの仲間の、いったい誰が怪人物「ともだち」なのか。

 かれの邪悪な世界破壊計画を阻止するため、2000年時点では40歳、2015年時点では55歳になる秘密基地の仲間たちが起ち上がって、「ともだち」(すでに世界大統領に登り詰めている)を打倒する、というものがたりである(らしい)。

 少年たちが夢見ていた21世紀に、われわれは現在生きていて、世界は、9.11テロ事件、イラク戦争、アフガン戦争、世界的に拡散していくテロ事件、アメリカ学生の銃乱射事件と、ますます混迷を深くしている。
 僕らは20世紀少年だった。そして21世紀をいかに生きていくか。それを考えさせる浦沢直樹の傑作が『20世紀少年』である。