20世紀少年

 4月に2週間寝込んだ間に浦沢直樹の人気絶大のコミック『20世紀少年』22巻を読みました。22巻でもまだ完結していませんが、最終章が雑誌連載開始ということで、完結も近いのでしょう。

 まえに『モンスター』完結の18巻を読みましたが、作品の完成度という点では『20世紀少年』が
優っています。
 舞台をソ連邦崩壊後の旧東ドイツや東欧諸国にして、刺激的な無差別殺人をする洗脳された若者たちというテーマなのですが、手を広げすぎて、本当のモンスターにたどりつくまで、無意味な殺人が多すぎたきらいがあって、いまひとつ満足できなかった。

 ところが『20世紀少年』は舞台が日本で、風景が1970頃の東京にはじまって、大阪万博で未来に科学的な希望とあこがれを見ていた少年たちが実に生き生きと描かれて、舞台背景に無理がありません。

 世界滅亡をめざす「ともだち」カルト教団もまた、リアリティーがあります。

 日本でわれわれが実際に体験したカルト事件がモデルに使われているからです。
 少年たちは、みんないい大人になって、ふたたび協力して「ともだち」のハルマゲドン的世界破壊に抵抗して行く物語ですが、1970年の風景から、2000年、そして近未来の2015年をめまぐるしく行き来する映画的手法がみごとに成功しています。

 僕も『尾道物語 純情編』など、20世紀少年たちを書いているものだから、とても刺激をうけています。

 浦沢さんの『PLUTO』も、手塚治虫の「鉄腕アトム」のリメークもので面白いのですが、作者の筆が遅く、じりじりしながら、次の号を待っています。