劇団員出入り口
いつもの散歩コースである。
大泉インターの入り口近くに2階建ての大きな建物がある。その裏側の道を抜けて、道路を渡り、
運動公園に入るのである。1周600メートルの運動コースを何周か回って、
駅の方角へ歩くのである。
建物の裏側に木のドアがひとつあって、「劇団員出入り口」としたプレートがついている。
建物1階には、大きめのコンビニと回転寿司の店があり、2階はイタリアン・レストランに
なっている。むろん劇場はない。
数年前からその「劇団員出入り口」の標識を見るたびに、ここに劇場はないから、きっと、
以前どこかの劇団が練習場でも置いていて、その後移転しながら、プレートだけが
そのままになっているのだろう、と勝手に解釈していた。
およそ2ヶ月ほど前に、この建物1階にある回転寿司に入った。
すると、店員達がみんなパフォーマンスをしているようなのだ。注文のとりかた。席への案内
の仕方。食べた客の皿を数える仕草。握りの注文をうけたときの確認の大きな声…。
そして、奥の壁面にポスターが貼ってあった。
「店内は劇場です。店員は劇団員です。―社長―」
それでわかった。裏のドアについている「劇団員出入り口」の意味。
社長はどんなお人だろうか。芝居好き?もと役者?
カンジンの寿司の味はまずまず。「劇的なもの」ではなかった。
勘定も「劇的」ではなかったね。