ケータイ小説の読者は誰だ?

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わくわく亭はまだケータイ小説というものを読んだことがないのです。

それでも大きな書店のベストセラーコーナーに、『恋空』とか『赤い糸』がトップにランクして

いるのを見て、「おお、これがいま話題のケータイ小説か」と表紙をめくって、特徴である

横書きのページを確認したことはあります。

誰が、どんな人たちがケータイ小説を書いているのか。

誰が、どんな人たちがケータイ小説を読んでいるのか。

興味がありました。

その問に答えてくれる記事が5月2日の朝日新聞に掲載された。

携帯小説の読者 どこに」という浜田奈美記者の記事がそれで、ケータイ小説の出現と趨勢は

現代日本の文化現象の、とても興味深い一断面であると感じました。

記事を要約してみましょう。



(1)ケータイ小説の登場と現状

作家のYOSHIさんが『DEEP LOVE』を個人サイトに発表した2000年がケータイ小説

「元年」だそうです。06~07年には書籍化した『恋空』『赤い糸』の成功で、ケータイ小説人気は

ピークに達した。映画化、ドラマ化というメディアミックスも実現した。

しかし08年には、はやくも人気は下降線をたどる。

『恋空』を出版したケータイ小説トップのスターツ出版によると、

「限られたパイで競争が激化したすえの、ブームの急速な終わり」だという。

それでも、100万部といったブームは無理でも、数万部を見込める作品は生まれる、と期待している。

スターツが運営しているケータイ小説サイト「野いちご」には、今年の3月現在でも、一日平均

の利用者数は57,000人もいる。

投稿作品数は、なんと100,000作品を突破したそうである。

すごい数字だ。

それでも、人気が下降線をたどっているというのだ。


(2)人気が下降した原因は?

「おなじパターンがつまんなくて」という読者の声が代表的だ。

お話には「エンジョ交際、ホスト、主人公の死」という3要素が「黄金のパターン」といわれるくらい

どの作品にも使われるから、読者はマンネリに飽きてしまう。

それは作者がプロ作家ではなく、若い普通の女の子たちであるため、一度ヒットした誰かの作品の

パターンを模範として、だれもかれも類似のものを書くからである。


(3)作者と読者はだれか?

投稿する作者もケータイで読む読者も、10代~20代の若い女性たちが圧倒的だそうだ。

「純文学は本好きが読み、ライトノベルはオタクが読む。そしてケータイ小説

地方に暮らし、小説など初めて読む女の子たちが読んでいる。膨大で画期的な活字マーケット

の出現」だという。


(4)「地方」という文化環境

小説は東京を舞台に書かれてきた。日本の文化は映画であれ、演劇である、文学であれ、学問も

政治も、すべて東京に集中している。東京でつくられたものを、地方は受容するばかりだった。

ケータイ小説は、そうした東京的な文化への反逆だといわれる。

地方に暮らす若者たちが、地方にいながらケータイで小説を投稿し、その場所で読み、書籍化された

なら地方のコンビニで、ショッピングモールの書店で立ち読みして、共感しているのだという。

ケータイというツールを武器に、地方の若者達が、自分たちの、まだ未熟な洗練されていない

言語表現を用いながら、自分たちの「物語」を語り、共感を得ているという状況があるのである。

スターツ出版によれば、ケータイ小説の読者は20%が首都圏で、80%は地方だという。


紙の本を出版する企業が年々売上減少に苦しみ、慢性的な出版不況に陥っている。

ネットやケータイの影響がいわれているが、それに加えて、東京的な文化集中に対する

地方からの反逆という視点も、ケータイ小説の人気、流行を考える場合に

欠くことはできないのではないだろうか。