イチローは高倉健か?

WBCの日本チームが優勝した。

WBC2連覇というより、日韓戦の決着というムードが日本と韓国を熱狂させたといってよい。

日韓の異様なムードがなければ、日本がキューバに勝とうとUSAに負けようと、これほどまでの

熱狂と盛り上がりはなかったであろう。

日韓の理屈を越えた「仲の悪さ」は、根が深い。秀吉による朝鮮侵攻、明治の「征韓論」、

日本帝国主義時代の「領有」、そして戦後の歴史教育問題と「仲の悪さ」の根拠は枚挙にいとまがない。

それは古くさかのぼれば、新羅百済時代の韓半島大和朝廷の関係にまでたどりつくだろう。

他人同士の仲の悪さより、血縁関係の仲の悪さの方が根が深いようなものだろう。

さて、

イチローはサムライ・ジャパンのリーダーである。それだけに彼の言動は一事が万事韓国側の

注目のマトになる。憎っくき日本チームの象徴がイチローなのだから。

昨日の延長10回、決勝打を打ったのは、その「憎っくき」イチローだった。

韓国チームの監督は敗戦の弁として、イチローと勝負したのが敗因だったといっている。

敬遠の指示ではなかったが、きわどい球で攻めて、歩かせてもいいというサインは出ていた。

それがバッテリーにうまく伝わらず、「イチロー勝負」に出て失敗した、というもの。

その弁を聞いても、それは監督の責任だと思う。

明確に「イチロー敬遠」と指示すればよかったのだ。

監督も、「イチローは危険だが、あわよくば討ち取りたい」という感情がぬぐいきれず、

中途半端な指示を出してしまったのだろう。

監督にも「憎っくき日本チームの象徴であるイチロー」を仕留めたいという強い感情が、冷静な判断

を曇らせたようだ。

《敬遠もありえた場面で投手が勝負したのは、打者が「日本の代表の代表」だからだろう。

シンボルをねじ伏せたいという思いは、センター前にはじき返された》(朝日新聞天声人語

解る、解る、その気持ち。

試合後のインタビューで、イチローは韓国チームについて、

《組織的な力によって、ものすごい力を発揮するチーム。これからも長く好敵手として戦う相手だと

思う》と、エールを送っている。

さて、いまひとつ面白いコメントを聞いた。

朝のTV番組のコメンテーター大谷昭宏さん。

ながく不調続きで、苦しみ抜いたイチローが最終戦で、決勝打を放って、日本中のおじさんたちの

胸を熱くしてくれたストーリーは、まるで東映任侠映画のヒーローであった高倉健さんそっくり

だった、とすこしテレながら大谷さんが話した。

映画の中で高倉健さんは、耐えて耐えて耐え抜いて、ついに映画のラストでは、大勢の敵の真っ只中に

単身で乗りこんで行き、物語に決着をつけるのである。

耐えて耐えてきたイチローが、最終戦で決着をつけた。

イチロー健さんのようだ、かっこいい。

別の番組でコメンテーターの鳥越俊太郎さんが「あの場面で涙が出ました」と正直に告白していた。

そうか、それで日本のおじさんたちは、感動して、ちょっと涙ぐんだのか。