「わたし落ちそうなの」
わくわく亭の恋愛話ではありません。
今朝、眼が覚める直前に見ていた夢の話です。
夢には50前後の歳に見えるわくわく亭の母が現れた。
(母は91歳で3年前に他界しているのです)
50前後に見えても、夢を見ている僕は「おや、お袋は80にもなって」と思っている。
そう思ったのは、母に恋人ができたようで、男が母に逢いに通ってくるからです。
しかし、母は(昔の美人女優木暮実千代さんにそっくりで)色っぽくて、男(彼も50代の年齢)
が通ってくるのも無理がないのです。
家の、なんだか新築したばかりで、木の香がただよう広間に母は男客を招き入れて、二人で
酒を飲んでいる。
季節は夏で、母は浴衣すがたです。男も和服のようでした。
(母は酒が一口も飲めない体質だったのに、夢の中では、かなりいけるクチ)
つぎの日。
母はこんどは男の家に招かれて行く。
一度立ち戻るから、
「おや、もうすこし酔っているようす。今夜は遅くなるのかな。そうなら、だれか迎えにやらなくては」
というと、
母は、ゆかたの袖で、上気した顔に風を送りながら、
なんともしあわせで、とろけんばかりの表情になり、
「わたし、もうすこしで、落ちそうなの」とはにかんだ。
落ちるとは、ああ、そういうことか。
相手にくどかれて、「ふれなば落ちん」心の状態なんだな。
いいじゃないか、とっくの昔に父は死んでいるのだし。母は80をこえて、一人身なのだし、
と僕は考えている。
「わたし、落ちそうなの」という艶っぽい声を、まだ耳の底に聞きながら、目がさめました。